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声をかけられて、俺はビクリとした。反射的に顔を上げると、そこには天秤先輩が立っていた。俺に歩み寄ってきた天秤先輩こそ、今まで営業に出ていたのなら、働きすぎ疑惑がある。
「は、はい」
「あ、ごめんね。邪魔しちゃって」
「いえ。お疲れ様です」
「客先でマフィンを頂いたんだけど、良かったら一つどう?」
「有難うございます」
お礼を告げると、箱から取り出した袋入りのマフィンを一つ、天秤先輩が俺のデスクに置いた。天秤先輩は気遣いの人だと俺は思う。俺もこういう気遣いが出来る人になりたいが、現状自分の仕事に精一杯だ。
この会社には、営業事務さんはいない為、その後天秤先輩は本日分をまとめてから帰っていった。俺の終わりは、まだ見えない……。
結局、俺は一仕事終えたのは、リモート作業中の蠍先輩が起きだした午前二時過ぎだった。引継ぎをし、俺は席を立つ。ネクタイに触れながら、肩がこったと思いつつ嘆息した。その後はコートを着て、オフィスから出た。俺が最後になるというのはあまり珍しい事ではないので、鍵を一つ預かっていたりもする。
帰りがけに何か購入しようにも、開いている店などコンビニくらいだ。
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