人類の幸福を最優先するスタンス

1/1
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

人類の幸福を最優先するスタンス

戦略派のチームリーダーに指名された当時、戦略派メンバー14人の中で、僕は最年少の29歳だった。 戦略派のメンバーは全員30代である。 M教授は50代。 平和派メンバーは16人で、なぜか全員40代以上だった。 総勢30名のメンバー皆が、誰よりも若い僕にチームリーダーが務まるか不安を抱える中、僕に不安はなかった。 チームリーダーに就任する挨拶で、僕はこう語った。 「今まで、肉体の死=魂の死であると考えられてきたが、本当にそう言えるのか?  もし脳の活動が完璧にデジタル信号化できるようになれば、もともとの肉体を失っても、他の肉体、又は肉体に代わる受け皿と優秀な脳波を組み合わせることで新しい生命活動を再生することが可能になる。  優秀な能力を失うことは人類全体の損失だ。仮に、アインシュタイン博士の脳波の完璧なコピーが現存したなら、現代の世の中は恐らく、今とは違う進化を遂げていたに違いない。  しかしながら誰の脳波を保存し、誰の脳波は必要ない、という選別は簡単にできるものではない。我々は神ではない。だが、そうした道義的な問題を抜きにして、この研究を安易に進めるべきではない。  常にメンバー全員の考えを共有し、同時に良心を共有することが望ましい。良心とは何か。それは自分以外のすべての心を理解し、大多数の人々の幸福を最優先しようとするである。たとえ、その脳の活動が個人としていかに優秀であろうとも、人類の幸福より自分の利益を優先する心のは非道であり、尊重することはできない。  この研究の成果は、常に全人類のプラスになることが大原則である。  そうした視点から、初めに申し上げたい。仮に、このプロジェクトのメンバーの言動に、全人類のプラスという大原則を軽視し、自分勝手な利益の追求に走る可能性を発見した場合は、全体で協議の上、本人に断わりなく強制的な処置を行う。  また、このプロジェクトが取組む研究の重大性を正しく認識できていない言動を発見した際にも、同様に全体協議の上、本人に断りなく強制的な処置を行うものとする。  どんな小さな非道も、我々には許されない。  異議ある者は全体のリーダーであるM教授宛てに、明日までメールにて意見を受け付ける。  明日までに異議ある旨のメールが届かない場合には、僕の意見に同意したと見なす。」  僕らメンバーは、基本的に自分の意思で、このプロジェクトから外れることはできない。  なぜなら、このプロジェクトBのメンバーになる際に、次の3点を確約したからだ。 1. メンバーは心身のエネルギーが完全消滅するまでメンバーであり続ける。 2.メンバーはプロジェクトに関わる如何なる情報も外部に漏らしてはならない。 3.メンバーの脳波は全人類の幸福のために無償で研究のために利用できるものとする。  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!