落ちてくるもの

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落ちてくるもの

 ぱしゃ。    頭に大きな水滴が落ちる。 「いやだ! お願いだ、助け……」  最初は声から。次に光景が浮かぶ。  城の大広間で、一人の若者が必死に逃げていた。  彼を追う魔族は容赦なく斧を振り下ろす。叫び声が途切れ、床に転がった兜から金髪がこぼれる。  急速に全てが遠ざかり、意識は地下室の瓶の中に戻る。ガラスの床に、身体を(つた)った水が()まる。  また、落ちてくる。  ぱしゃ。 「やめてくれ、死にたくない!」  別な男の声。  再び悲しい光景が浮かぶ。  水は、腰まで上がってきていた。
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