22人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
城の地下室、そこに置かれた瓶の中に私はいる。
瓶は四体の彫像に囲まれている。獣の顔に人間の身体を持つ、魔族の彫像だ。
出口は鉄の扉一つ。鉄格子の間から暗い階段が見える。その向こうから指の先程の陽の光が入ってきて、それでやっと昼夜の区別がつく。
城は魔族に占領されて長い。昔の記憶は残酷な死を見過ぎて塗り潰された。
ただ「ここにいるのは私のせいだ」と心に刻まれている。
日々、天井の魔法陣から瓶へと水滴が落ちる。胸まで溜まると魔族が回収しに来る。
ガラスの瓶に映るのは白い髪と同色の生気のない瞳。
ずっと何も口にしていない。眠くもないし疲れもない。
溜まった水に身体を沈めても死ねなかった。
やっと座れるくらいの瓶の底で、日毎夜毎死の情景を見る。
悲鳴は耳を塞いでも入ってくる。
心がなくなればいいと、思うことすら虚しい。
最初のコメントを投稿しよう!