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広場を眺めていた私の前に、遮る人影が現れた。グレイだ。
「待たせたな。……それは?」
私は抱えた袋を見せる。
「もらったの」
中身はソフィアと両親が育てた野菜だ。
「食堂のおかみさんに料理してもらえるかしら」
グレイは頷く。
「ああ。帰ろうか、レイン」
荷馬車ががたごと揺れる。
ぴちゃん、と小雨が降りかかり、私は空を見上げた。
もう魔力はないけれど。
かの日に聞いた、聖なる魔法の言葉を私は空へと唱える。
魂が浄化されるよう、祈りを込めて。
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