転機

1/5

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

転機

 その男は突然現れた。  扉が音もなく空いたので、気づくのが遅れた。  カンテラの光が持ち主を照らす。背の高い、灰色の髪の若い男が立っていた。 「私に構わず逃げて」  そう言いたくても上手く声が出ない。咳き込んだ私は、諦めて彼に背を向けた。溜まった水が波打つ。  ここに辿(たど)り着き、扉を開けた者は過去にもいた。  皆、死んだ。  きっとこの人も死ぬ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加