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「あの頃と変わらないな」
予想外の言葉に振り返る。ぱしゃぱしゃ水音がした。
私、彼と会ったことがあるんだろうか。
視線を正面から受け止め、彼は心底嬉しそうに笑った。
「大丈夫、絶対助ける」
そして杖を掲げた。
青緑の宝玉がついた美しい杖を。
彼が何事か呟くと、宝玉が光りだした。光は強さを増し、矢のように放たれた。
凄まじい音がした。
見上げると、魔法陣が蛇のようにねじれて消えるところだった。
今までびくともしなかった瓶が震え出す。
誰も壊せなかった彫像に、天井に、ヒビが入る。
一瞬の後、何もかもが砕け散った。
「大丈夫」
彼の声に、閉じていた目を見開く。
私は宙に浮いていた。周囲の金の光はまるで繭のよう。繭は瓦礫の山を越え、男の前へと進む。
光が消え、私は地面へ降り立った。ひた、と素足に冷たい床が触れる。
「行こう」
彼が私の手をとった。
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