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私は荒れた庭の隅に下ろされた。
グレイは「少し待っててくれ」と城内に戻った。
陽の光が眩しい。
せわしなく人々が行き交う。
武装した人ばかり。怪我人も多い。
端々の会話から察するに、どうやら魔族が占領していた城を陥落させたらしい。
魔族の死体が黒い山のごとく積み重ねられ、火葬されている。ローブ姿の者達が歌っている。
あれは昔どこかで聞いた、聖なる魔法の詠唱。
魂が恨みを残さず、浄化されるよう祈っている。
遠くの城門に荷馬車が次々到着する。グレイに似た軽装の者達が城に入っていく。
うち一人が近づいてきた。若い金髪の女性だ。表情は固く、目に敵意があった。
私は逃げようとしたが、立てなかった。
女性は杖を突き出してきた。
喉元に赤い宝玉が迫る。
それは当たる寸前、弾かれた。
「彼女に手を出すな」
グレイだ。私の前に立つ。
「何を考えているの、グレイ。それは呪われている。始末しなければ」
女性は苛立っていた。
「団長にはさっき話をつけた」
「なんですって?」
「今日で退団する」
彼は再び私を抱きかかえる。
呼び戻そうとする声が遠ざかる。
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