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「どうして、たすけたの」
荷馬車ががたごと揺れる。
言葉が出るようになったのは、城を出て3日目のこと。
私は荷馬車の奥に寝かされていた。時折彼は私に杖をかざす。身体が少しずつ楽になっていった。
「……ああ、覚えてないのか」
彼は手網を握ったまま振り向く。
「俺にはあんたを助けたい理由があるんだよ。それに、まだだ。
あんたを助けるのはこれからだ」
「……?」
何を言っているのか。
ついでに尋ねてみる。
「どこにいくの」
「俺の故郷」
正直どこでもよかった。あの忌まわしい城から離れられるなら。
外にいることが、まだ信じられない。
ふと私は、彼の背中越しの空を見て固まった。
雨雲が立ち込めていた。
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