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雨音
ぱしゃ、ぱしゃ。
雨が降る。絶叫が頭に響く。城を出たのに、死の情景が離れない。
皆、死んだ。
皆、生きたかっただろうに。
どうして私だけ助かった。
「……ずっと、内に秘めてきたんだな」
肩に置かれた手の感触。瞼を開く。
荷馬車は止まっていた。
「悲しいんだろ? 泣いていいんだ。
俺が聞いているから」
雨音の中、声がはっきり聞こえた。
なにかがぷつん、と切れた。
涙がこぼれた。後から後から流れる。
「うっ……ああ……」
グレイは私の頭を優しく撫でてくれた。
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