あるじ

7/7
前へ
/7ページ
次へ
あっせん屋の言う通り。わたしは人に飼われる気はないけれど、人のかわいさを知ってしまってはもう、前のように孤独には生きられない。人もそうなのだと言う。一度「あるじ」を知ってしまうと、それまでの孤独を思い知らされて、また次、次とわたしたちを追い求める。 さみしいんなら、一緒にいたらいいんだよ。さみしいよ、一緒にいようって。あんたらは、そう言う事ができないから、いつまでも俺の仕事はなくならない。でも言えなんて言わないな。それは俺の仕事じゃないからなぁ。 そもそも、言いたくもないんじゃないか。さみしくも、一緒にいたくもないのかもしれないし、そんなことは考えもしないのかもしれない。 毛色からして違うんだ。思ってることを当てるなんてできるはずがない。お好きにどうぞ、期限が来たらご返却願いますって言ってれば、俺の仕事は右から左に「あるじ」の元へ、人を動かすことのみなんだからね。 ニャーニャーと言ったあっせん屋の言葉はそれで終わったと記憶している。奴は全てを語ったらしく、それ以上はもうなにも話さなかったし、それ以後も貸し、返しの話以外はすることがない。 期限付きの「あるじ」になったわたしは夜道を歩く、高い所に登りたくなって、塀の上に飛び乗りまた歩いて行くと。 後ろからぐうぐうと音が聞こえた。  あるじ (おわり)
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加