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あっせん屋の言う通り。わたしは人に飼われる気はないけれど、人のかわいさを知ってしまってはもう、前のように孤独には生きられない。人もそうなのだと言う。一度「あるじ」を知ってしまうと、それまでの孤独を思い知らされて、また次、次とわたしたちを追い求める。
さみしいんなら、一緒にいたらいいんだよ。さみしいよ、一緒にいようって。あんたらは、そう言う事ができないから、いつまでも俺の仕事はなくならない。でも言えなんて言わないな。それは俺の仕事じゃないからなぁ。
そもそも、言いたくもないんじゃないか。さみしくも、一緒にいたくもないのかもしれないし、そんなことは考えもしないのかもしれない。
毛色からして違うんだ。思ってることを当てるなんてできるはずがない。お好きにどうぞ、期限が来たらご返却願いますって言ってれば、俺の仕事は右から左に「あるじ」の元へ、人を動かすことのみなんだからね。
ニャーニャーと言ったあっせん屋の言葉はそれで終わったと記憶している。奴は全てを語ったらしく、それ以上はもうなにも話さなかったし、それ以後も貸し、返しの話以外はすることがない。
期限付きの「あるじ」になったわたしは夜道を歩く、高い所に登りたくなって、塀の上に飛び乗りまた歩いて行くと。
後ろからぐうぐうと音が聞こえた。
あるじ
(おわり)
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