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つるりとしたその毛皮は触り心地が良く、そこに頭をのせてするすると動かしてみると、ぐうぐうとなにやら音が聞こえてきて、それは喜んでいるサインなのだとは、後にあっせん屋の眼鏡から聞いてなるほど似ているところがあるんだなと、ますます近い気持ちになった。
わたしが借りたこの生き物は愛すべきところしか見つけられない、かわいいの塊だ。耳は大きくて丸みを帯び、目はキョロキョロと動いて、わたしをいつもそれで追っては飛びついたり、頬をすりよせたりする。わざと驚かせた時のあの、開ききらないのが物足りないとでも言いたいような、見開かれたところも良い。鼻の穴はいつも動いて、せわしなく、時折するくしゃみが想像よりも騒々しくて、水しぶきが遠くまでとんできて、それには参ってしまう。毛は、ふさふさとしてやらかい所と、短毛でつるりとした所があり、どちらかを選べと言われても、恐らくはずっと迷って、こっちに傾き、あっちに転びと、きっと決められないだろう。
そんな究極の選択を選べ、とは、誰も言わないのをいいことに、この生き物の「あるじ」であるわたしはふさふさとつるりを今日も行き来するという贅沢を味わっている。
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