あるじ

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俺たちにもいろんな毛色がいるでしょう。白、黒、三毛に、灰色…外国の奴なんかも入れたらそらもっと大勢になるよな。それぞれ同じ模様なんてないし、黒の一色といっても、そこにちょっと白い毛があったり、茶色っぽかったり、目、鼻、耳…まるっきり同じ形の奴なんているわけがない。今まで何憶何万何千の同輩が産まれては死んでいってるっていうのに、まったくおんなじ奴なんていやしない。 どうしてあの、かわいいのを貸し出しているのか、わたしはあっせん屋に聞いたことがある。 産まれながらにさみしかったり、楽しいばっかりの能天気もいるし、晴れと雨とで泣いたり笑ったりを繰り返す器用な奴もいる。途中で片目をつぶされちまったり、足をひかれてひきずってるようなのもいるし、道端で死んでそのまんま、トラックに入れられてさよならのもいれば、どっかへ連れて行かれて、飯を食わされて肥って、チューチューするおやつをもらえるところにもらわれていったのもいる。そいつだって、本当は外で自由にしていたかったのに、家から出されなくなって、めんどうくさくてたまらないと窓から俺を見つけては、ここを開けろ、開けろとせがんできたりするんだ。
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