変な男

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─── 「少し低くないか?」 突然声を掛けられ、ピンを押し込みながら振り向くと、先日竹内と一緒にいた男がすぐ後ろに立っていた。 「ひっ」 間近で見る男はその時よりも一層体格が良く見え、それでいて気配が全く感じ取れなかったせいで、不意討ちを受けてよろめいた梅音は後頭部をアルミの枠にぶつけてしまった。 「こっ、こないだの、、、」 「初対面にしては、挨拶らしい挨拶もさせて貰えなかったリオントラストの者です」 頭をさすりつつ男を睨み、それから辺りを見てみると今日は竹内の姿はなく、少し先の道路脇に三日前と同じ黒の高級車がハザードを点滅させ停まっていた。 「こっこんなところまで来て。 付き(まと)いみたいなことはやめて下さい」 梅音は馴れ馴れしい男の態度より、突然現れて驚かされたことに腹が立った。 「付き纏いとはあんまりだ。 こっちはまともに会話を成立させて欲しいだけなんだが」 声と身体で梅音を覆い被す、見かけだけは(・・・・・・)上品な男が不本意を顕にして否定した。 梅音が黙っていると、 「御婦人とのやり取りから常に雑用を頼まれてるように見えた。 適当に日を見計らい、この辺りをうろついてたら会えるだろうかと」 「あ、、、」 「というのは嘘。 山の買収にあたり事前に君のバイト先からシフトまで調べさせてもらっている。 取引前提での身辺調査といったところだ」 悪びれもせず言って、横並びの掲示物に視線を移すと『失礼』と呟き、梅音越しに幾枚かを上方に貼り直し、その後、手を後ろに組み、改めて梅音を見つめた。 「身辺調査、、、っ?」 そんなことまでした上での付き纏いなら尚更悪いじゃないか、と梅音は呆れた。 「改めて自己紹介させてくれ。 リオントラストの丑蜜(うしみつ) 白夜(さや)だ」 片方だけ前に出された手は握手を求めている。 が、梅音はその手を困ったように眺め 僅かに首を振った。 「やめて下さい」 初対面で求められる握手など(よこしま)な類の勧誘にしか受け取れない。
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