うめねくんの秘密が知りたい

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─── 「丑蜜(うしみつ)さん、先に食べてて下さいね」 「どうした?」 配膳を済ませた後、仔猫を抱いて隣の部屋に移動しようとする虎太郎(こたろう)を丑蜜が見上げた。 「この子の食事の世話をしなければいけませんので」 「給餌を終えるくらい待ってるさ。 ある程度離乳してるんだろ?」 「はい、、、ぃぇ、その、、、。 何て言えばいいのか。 ぇ、、、っと。 ああ、みたらしの食べ方には少し癖があって。 特に夜は手を貸してやらなければならないものですから少し時間が」 みたらしの離乳は実はほぼ完了している。 ただ、その給餌法は恥ずかし過ぎて、とても人に言えるものではなかった。 「癖? 癖とは?」 「そ、そんなに変わったことではないです」 繕い笑いをしてみるものの、丑蜜は明らかに興味を示している。 「ここでやったらどうだ?」 「ダ、、ダメですダメです」 その場しのぎに嘘をつくのはもう懲り懲りだった。 丑蜜に対して適当な言い訳をすれば却って関心を持たせてしまうことも身にしみて分かっていたから、部分的にでも真実を伝える方がいい。 「餌やりの部屋は決めてますし、客間以外はあまり他人には見せたくないので」 「そうか。ま、それは尤もだな。 、、、にしても食事は待ってるとしよう。 せっかくの料理だ、一緒に食べたい」 丑蜜に一般的な常識があることは既にわかっている。 が、万が一のことを考えて一応念を押すことにした。 「丑蜜さん。 給餌の間、決して部屋を覗かないと約束して下さい」 常識があるのは認めても、絶対の信用があるというわけではない。 現に虎太郎の言葉を聞いた丑蜜が動きを止めて見つめてくるのは、頭の中で何やら巡らせているからに違いなかった。 「、、、覗きはしないが。 まさか襖の奥で機を織ったり包丁砥いでたりはしないだろうな」 探りたい気持ちを隠すように茶化してくる丑蜜へ曖昧な笑みを返し、虎太郎は軽く頭を下げて隣室に向かった。
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