うめねくんの秘密が知りたい

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─── 「梅音(うめね)君時間だよ、お疲れ」 自宅から徒歩で二十分ほどの所にあるホームセンターの一角、資材加工ブースにいた梅音は、社員から声をかけられると急いでエプロンを外し、客が残して行った切り落としの端材が入った袋を持った。 午後四時。 「お先に失礼します」 高校を卒業してからずっとこのホームセンターの加工ブースで働かせて貰ってきた梅音の就業時刻は、午前十時から午後四時までと決まっていた。 しかし先々週から朝一時間早く出勤して昼休みに一時帰宅し、再び四時まで働くという形態に変えてもらい、慌てて帰るという日が続いていた。 みたらしを本格的に飼うと決めたからには世話はもちろんのこと、キャリーケースに始まってフードにトイレに清掃用具、他にも消耗品や遊び道具なども揃えなければならなかった。 キャットタワーやケージは追々作ると決めていたが、早々に連れて行った動物病院には去勢やワクチン接種などで、定期的に通わなければならないこともわかった。 それら費用を含めて計算したところ、時給一時間分は多く働く必要がある。 バイトでも使える割引制度でペット用品を安く買えることもあり、一週間で一通りは揃ったが、その間いつも貰っている加工木材の端切れや見切り品を買って運ぶことができなかった。 今日は貰える分の端材を詰めるだけリュックに入れてロッカールームを出る。 「梅音くん」 帰りがけ、裏口の手前で売り場主任の女性が段ボール箱を抱えながら寄ってきた。 「あ、主任、お疲れ様です」 「つかまえられて良かったわ。 ね、きみ最近猫を飼ったんだって? 売り場のスタッフにまだ仔猫みたいだって聞いて、どうよ? これ」 少し持ち上げて見せてくれたのはキトン(幼猫)用の缶詰めだった。
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