『砦』

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スマホのライトを点灯させた丑蜜が運転席側に回り、未だ汗ばむ虎太郎の手を取る。 「一緒に歩こう」 玄関へ向かおうとする丑蜜(うしみつ)を引き戻すようにして立ち止まった虎太郎は、 「充電を済ませたソーラー式ランタンが勝手口にあるんです。 鍵もまだ開けたままですし」 「じゃあ裏から入るか。 足元が見えにくいから気をつけて、もっと近くに寄って」 「は、はい」 「最近頻繁だな」 「そうですね。 停電の間隔は短く、時間は長くなってます」 「でもま、、、こういうことでもないと東京では地球本来の夜空を楽しめない」 そう言って立ち止まり、虎太郎に空を見上げるよう促した。 「あ、、、っ」 夕方までの雨が嘘のように、空には満点の星がひしめいていて、その数の多さに虎太郎は息を飲んだ。 「みたらしには悪いが、少しだけ瞬き散る星を堪能させてもらうか」 丑蜜はライトを消して庭木の間から望む星空を眺め続けた。 虎太郎を引き寄せた腕は、そのまま しっかりと肩を抱いている。 「、、、綺麗、ですね」 「ああ ── 本当に」 空に向けていた顔を丑蜜へと動かすと、丑蜜も虎太郎を見下ろした。 「好きだよ、うめね君」
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