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「おかえり、うめね君」
「丑蜜さん?」
門扉の前に立ち虎太郎を待っていた丑蜜は、すぐに近寄ってきてコンポストの持ち手を取った。
「重いな」
そう言って覗き、暫し動きを止める。
フタを外していたので中の黒い塊が丸見えだったのだろう、それが死んだカラスだと分かると丑蜜は黙ってコンポストを引き、虎太郎の横に付いて歩き出した。
虎太郎は敷地内の北側へと回り、センサーライトが先導して点灯していく中、壁に立てかけてあるスコップを手にして角の内側辺りに向かう。
「埋めるのか?
明日役所に連絡して引き取りに来てもらったらどうだ」
丑蜜の真っ当な提案に目を泳がせたものの、虎太郎は捲り上げた後の袖で一度だけ目を擦ると大きく息を吐いてスコップを握り締めた。
「時間がないかも知れません。
今埋めてやらないと、、、」
黒い空を見、そして同じく黒い地を見て言う。
「わかった。
俺が掘るから場所を教えてくれ」
今にも泣き出しそうな顔が頷き、家屋から最も離れた塀の内側を指差すと、その様子にただならない何かを感じ取った丑蜜は居ても立っても居られず、脱いだ上着を虎太郎に渡して代わりにスコップを奪った。
そして『大丈夫だ、俺がいる』とだけ声を掛けると、必要な大きさを目で量り黙々と穴を掘り始めた。
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