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そこから、
兎にも角にも不安そうな梅音の気を済ませてやろと丑蜜は ひたすら掘り込み、あっという間に70リットルほどの穴を作り上げ、スコップを脇に積んだ土に刺した。
「出来上がったぞ、こっちへ」
二人でコンポストを傾け、バサバサと遺骸を落とし、その上に丑蜜が土を掛けて埋める。
「ありがとうございます」
「何があった。
鳥が死んだって以外に悲しいことがあるなら教えてくれ」
虎太郎自身、丑蜜に訊かれるまで自分が何に悲しんでいるのか分からなかったのだが、落ち着いた声で問われてみると、そこで初めて
『警告に耳を傾けなかった人達が背負うこれからの諸々』を想像してしまった己が悲しみの要因なのだと理解できた。
「始まるんです、何もかもが。
覚悟は出来てるのにいろいろと考え過ぎて、、、」
全てを言葉にするのはそら恐ろしかったが、丑蜜が竦んだ身体を支えてくれたのは『もう口にしなくても良い』という合図だと知り、逞しくも深い懐に身を委ねた。
埋めた後の土山を見、丑蜜は額を伝う一筋の汗を拭う。
「今日は特に多かったんだな」
「顕著な太陽面爆発があったんでしょう。
僅かな電波バーストでも被害を受ける鳩やカラスは昨日までの小爆発で幾らかやられてましたが、これほどの数ではありませんでした。
今日は猫ですら一匹残らず姿を消している。
これは間違いなく太陽フレアが活動期へ入ったことを示しています。
今後は爆発の程度も一気に大きくなると思います」
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