『砦』

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「みたらしっ」 虎太郎(こたろう)が飛び込んだ居間の隣室にはケージがあり、その隅で みたらしは(うずくま)っていた。 「やはり様子が変だな」 丑蜜(うしみつ)が覗き込む横で虎太郎がケージを開けた途端、家中の電気が消えた。 「停電だ」 「丑蜜さん、勝手口からソーラーライトを」 「ああ」 虎太郎が みたらしを掴んでケージから出す間、蛍光テープを頼りに持てるだけのライトを取って戻った丑蜜は、各箇所へ吊るしたり置いたりし、全ての雨戸を閉め、カーテンを合せた。 「電磁波による不調なら戸を閉めたところでどうにもならないけどな」 「準備はありますから」 虎太郎は部屋の奥にある襖を開け、中の上段を指差して見せた。 そこには大きな箱が一つ、箱の下には折りたたまれたシートが何層もあり、隙間に手を差し込んで持ち上げた丑蜜は予想以上の重さに驚く。 「これ、、、まさか電磁波用の防護シートなのか?」 「はい。 丑蜜さんは下段にある脚立を使ってまずは天井にシートを打ち付けて下さい。 次に壁に据えてあるフックにシートの鳩目を掛けて壁面全体を囲んで貰えますか? 畳の上は僕が。 追って継ぎ目を防磁テープで塞ぐ作業もしていきますから」 丑蜜が取り出した大きな箱には金槌と強化セラミックでできた釘、超強力両面テープに養生テープ、水漏れまで防げる防水テープに防磁テープまでがきっちり詰められていた。 「出入り口はどうするんだ?」 「重ねを深く取ってマジックテープで合わせればいいと思います」 虎太郎が説明している間にも丑蜜は脚立を取り出し、シートを広げて天井に打ち付ける作業を始めていた。
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