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ニャァァッ、ニャァァァッ
みたらしは依然甲高い声で鳴いている。
「ダメか、、、」
圧力鍋だと白飯も一分で炊きあがる。
鍋敷きを置いた長盆に鍋ごと乗せ、気圧を下げながら食器を揃えている間に
ほうれん草のキッシュも焼き上がってしまった。
「何で食わないかなぁ、腹減ってんだろ?」
足元に長盆を置き、そっとシートを捲って覗くと、丑蜜が みたらしを何度も抱き上げ、フードの入った皿の前に置き直していた。
みたらしはすぐに入口にいる虎太郎の存在に気づき更なる大音量で鳴き、小走りで駆けてくる。
「出ちゃだめだよ、みたらし」
虎太郎の足元に絡みつき、声も掠れ掠れに泣き続けた。
「ずっとこんなで全く食べようとしない。
一体何が気に入らないんだ?」
丑蜜は参ったとばかりに足を投げ出し、後ろ手を着いて仰向いた。
少しして、
「そう言えばうめね君、いつだったか
『みたらしの食べ方にはクセがある』って言ってたよな?」
思い出したように丑蜜が身を起こした。
「えっ、あ、、、。
そ、そぅでしたっけ?」
「ああ確かに言っていた。
『手を貸してやってる』ともな」
シートの隙間から和室に引っ張り込まれた虎太郎は、早速みたらしに足元からよじ登られ、みたらしは虎太郎に抱かれた途端、シャツの隙間から胸元を目指して鼻を擦りつけ始めた。
「えーと、えーと、、、
ああそうでした。
でも教えるほどのことではありませんので、、、。
丑蜜さん、やっぱり給餌は僕がやります。
すみませんが部屋の外に出ていて貰えますか」
ニャァッ、ニャァァッ、、、
「何を言うんだ、うめね君。
みたらしはもう俺の息子みたいなものなんだぞ?。
餌やりくらいはできるようになりたい」
虎太郎を部屋の中央に引っ張った丑蜜はその足元にどっかりと腰を降ろし、腕を組んだ。
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