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どれくらい眠っていたのだろう。目を覚ますと白い世界が広がっていた。そこには、男の人が立っていた。どうやら電話している様子だった。
「……さて、一泊二日の体験してみてどうだった?」
電話先の声がこっちまで聞こえてきた。一泊二日の体験?…ああ、レンタルライフの話かな。じゃあ、彼が契約者さんかな。
「……最悪だよ。」
彼はそう言った。察しがついていたとはいえ、ショックだった。やっぱりそうだよね。あんな話をさせて、聞かせて…あんな経験までさせて。ごめんなさい。
「彼女を見たらちゃんと罪を償おうと思ったよ。最悪なことにね。」
え?
「僕は今までずっと逃げてきたんだ。トラウマからもつらい現実からも。彼女はそれに立ち向かったんだ。……今度は僕の番だ。怖いけど…彼女のように立ち向かってみるよ。」
「…では、永久契約は?」
「しない!この身体は彼女に返すよ。」
そう言うと、彼はだんだん私からと遠ざかっていく。
「待ってください!私は違うんです!あなたがいたから!あなたがいてくれたから、私は立ち向かえたんです!」
必死に叫んだけど、彼は遠ざかっていった。見えなくなる寸前に彼は振り返り、笑顔をつくった。
私を呼ぶ声がする。聞き覚えのある暖かい声だ。私はゆっくりと目を開けた。
「ああ、よかった…!このまま目を覚まさないかと…!」
「……お母さん?」
そこにはお母さんがいた。ズキッと頭が痛んだ。どうやらここは病院のようだった。
「大丈夫。大丈夫よ。これからは私がそばにいるからね。ごめんね。本当にごめんね。」
そういって優しく抱きしめてくれた。こんな暖かいのは何年ぶりだろう。思わず涙があふれた。
それから、多くの説明を受けた。あの時、ひどい罵声と叫び声を聞いたご近所さんが通報してくれて、あの男は拘束されたらしい。私は体中の骨が折れたり、内臓が破損していたりで生死をさまよっていたらしい。
そして、あの環境下にいた私は重度のうつ病であったらしく、何とか正気を保つために自分の中に男の子の人格を創っていたらしい。その子とはレンタルライフという架空のサイトによりつながっていたという設定と私の部屋にあったノートに書かれていたそうだ。
あれから半年がたった。私は彼がいたとされる町に来ていた。
ー半年前ー
「そういえば、これなんだかわかる?」
そういって手渡されたのは一枚のぼろぼろの紙切れだった。
「意識のないあなたがずっと大事そうに持っていたから、とっておいたんだけど…」
「……うん、わかる。わかったよ。捨てないでくれてありがとう。」
そこには私ではない筆跡で、こう書かれていた。
「ここで待ってる。元気になったらおいで。」
そこは彼の町だった。書かれていた住所は廃止になったプラネタリウムであった。
瓦礫をかき分けてはいると、男の子が一人立っていた。
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