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ガチャガチャと部屋のドアノブが荒々しく回った。
「おい!何抑えてやがる!開けろ!」
なんて力だ。抑えるのがやっとなんて。
「ごめんなさい。ごめんなさい。お金はもうないんです。許してください。」
ガタガタと震えながら彼女はそう言っている。しかし、彼女の声は届いていない。
「チッ、そっちがその気なら…」
声が遠ざかり、力が緩まった。なんとなく次の行動が読めた。ドアから離れようとした瞬間、バキッと大きな音をたてながら、ドアが吹き飛んだ。
「うわぁぁあぁあ!ごめんなさい!お金はもうないんです!」
彼女は大声で叫んだ。こいつが彼女の…トラウマなのか。その男はとても大きく、右手に金属バットを持っていた。何を叩いたのか、ボコボコに凹んでいる。男はこっちに手を差し出しながら、
「金は何処だ?はやくよこせ。」
と言ってきた。彼女は震えた様子でただ黙っていた。それに釣られ、僕も黙っていると金属バットで机の上のものを薙ぎ払った。
「黙ってねぇで、さっさと出せ!」
その気迫に押されたが、僕は声を出した。
「お金はない。バイトもやめたんだ。もうぼ…私をこき使うのはやめろ。」
僕は震える手を抑え、にらみつけた。
「は?なんだとてめぇ…もっぺん言ってみろ!」
胸ぐらをつかみ、壁にたたきつけられた。服がめくれて、お腹が顔をのぞかせた。男は身体を見るなり、
「てめぇももう、女の身体になったんだ。それ売って稼いで来いよ。」
それを聞いたとき、僕の中で何かが外れた。
「いつまでも調子乗ってんじゃねぇ!!あんた、それでも親か!!子供は親の……道具じゃないんだぞ!!」
今まで言うことを素直に聞いていた娘が反抗したことに驚き、男は手の力を緩めた。僕は手を振りほどき、
「この子の人生を決める権利をてめぇなんざが持っていいわけねーだろーが!!」
と言った。ここで僕は口を止めたが、なぜかまた動いた。
「私はあなたを父親と思ったことなんて一度もないから!!」
僕も彼女もハッとした。
「今、私言っちゃった。お父さん……いえ、この男に。」
この子は僕よりずっと強い。たった一度、機会を作れば彼女はトラウマを振り払った。すごい子だ。
そんなことを思っていると、重い衝撃が頭に走った。
「このガキが!調子に乗ってんじゃねえぞぉ!!」
男は彼を何度も鉄バットで殴りつけた。10数発入ったところで彼は意識を失った。
「あの、契約者さん?大丈夫ですか?起きてください……。また私を一人にしないでください…。」
そのまま、私も眠るように気を失ってしまった。
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