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変化
『記憶、レンタルできます』
何気ない民家の壁にあった貼り紙。
こんなの怪しさしかない。
イタズラか?
紙はかなり長い期間雨ざらしだったのか年季を感じるが上等な紙のようでもある。
何かのドッキリか?
辺りを見回すが遠くに犬の散歩をするおばさんが居るくらいで特に人も居なければ何もない。
「……記憶」
呟いてみるが意味も意図もわからず、首を傾げた俺はポケットの中で存在を主張するスマホをそのまま耳に押し当てた。
『あ、博之?今日大学来ねぇの?』
「あー、寝坊して今、家出たとこ。三十分くらいで行くわ」
『それ着いたら昼じゃねぇか!』
大学でいつも一緒の孝順に返事をして笑われてからスマホをまた捩じ込むと、そのまま通り過ぎた。
古そうな紙だが今までは気づくこともなかったその貼り紙。
駅に向かう足を速めた俺はそんなものはすぐに忘れた。
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