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「マジ、おっせぇな。本当に昼に来るなよ」
大学の学食で座っている孝順に嫌味を言われつつその向かいに座る。
「何?ぼっちがそんな寂しかったのか?」
受け流してコンビニで買ってきたおにぎりをかばんから出すと孝順は口に入れた生姜焼きを飲み込んで水を勢いよく口にした。
「ぼっちじゃねぇわ!あのなぁ……」
言いつつ声のトーンを落としてトレーごと退かしてから身を屈めて手招きする孝順。
「お前とくっつく趣味ねぇけど?」
「茶化すな!アホがっ!」
腰を浮かせた孝順に首の後ろを掴まれて無理矢理机に沈められた。
「何だよ」
面倒だから早くして欲しいのに孝順は言いにくいのかなかなか言葉を発しない。
「腹減ったんだけど?」
焦れったくて起き上がりたい旨を口にすると孝順は深い息を吐いた。
「お前さぁ、祥介居ねぇのわかんねぇの?」
「見りゃ居ねぇってわかんじゃん。あいつも寝坊?」
「違ぇわ」
「何だよ」
面倒くさくなって体を起こそうとすると、孝順にまた肩を押さえられて戻される。
「あいつ……ヤバいかも」
「は?」
やけに真剣な顔をする孝順に冷めた目を向けることしかできない。
なかなか話を進めないことにも俺は苛立ち始めていた。
「お前さ。“記憶屋”って知ってる?」
「知らね」
興味もなくてとりあえずあくびを噛み殺す。
「求める人間の前に急に現れるらしいんだよ」
いい加減その体勢が辛くて孝順の手から逃れて机に頬杖を付いた。
妙に深刻そうに話す孝順をバカにしながらおにぎりの包装を剥がす。
「古い家の壁に『記憶、レンタルできます』
って書いてあるらしくてさ」
うまく剥がせなくて舌打ちをしかけた俺はゆっくり孝順を見た。
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