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「……は?」
思い出すのはさっき見たあの古くさい貼り紙。だが、
「それが何なんだよ」
特にヤバさは感じられなくて俺は千切れた海苔は諦めておにぎりを口にした。
安定のツナマヨ。
もう一つ買ったのもツナマヨの俺は次は海苔もちゃんとうまくやる……それくらいしか頭にない。
「“記憶屋”では好きな記憶をレンタルできるらしいんだけど、場合によってはその記憶に食い殺されるって噂でな」
「アホらし……」
意味のわからない話を鼻で笑う。
「俺も信じてなかったよ!でも、あいつ昨日も一昨日も最近大学来てねぇだろ!?あいつのアパートうちから大学来る途中にあるし寄ったんだけど……」
眉を寄せた孝順は俯いたまま黙り込んだ。
「おい、何だよ」
もったいぶる言い方をする孝順にイラつく。
「……廃人っていうの?」
「はぁ?」
「玄関開いてたから入ってったら部屋の真ん中座っててさ。でも、何言っても反応しねぇし、たった数日でめっちゃ頬とか痩けてるし」
「お前、漫画の読み過ぎ」
大口でおにぎりを口にして笑ってやった。
だが、孝順は真剣な顔をしたままこっちを向く。
「あいつ、先週めっちゃ自慢してきたんだよ!『“記憶屋”でいいのもらったから俺はもう最強だ』って」
いつまでそんなくだらない話を続けるんだと呆れた俺は二つ目のおにぎりの封を開けた。
今度は慎重に……そこに意識を集中させる。
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