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頬に水滴を感じて目を覚ます。
「……おはよ」
衣装ケースを被せてある母の遺影と位牌にあいさつだけしてシャワーを浴びた。
室内なのにいくつかある水溜まり。
それももう慣れたものだ。
早く目が覚めた俺は身支度だけして昨夜食べきらなかった残りのツナマヨに手を伸ばす。
ピッと真ん中のテープを剥がすとどうしてだか海苔が破れた。
ため息を吐きながら欠けた海苔を睨んでおにぎりを咥える。
すぐにおにぎりを口に収めると、トートバッグを肩に掛けて部屋を出た。
一応の鍵をかけて傘を片手に外に出る。
歩いていくうちに猫の鳴き声がして顔を上げるとまたあの貼り紙があった。
色褪せた木の壁に貼られたその文字を睨む。
孝順のあの顔を思い出してスマホを取り出してしばらく眺めてから祥介に電話をしてみた。
コール音はするが祥介は出ない。
「……面倒くせ」
呟くとスマホをしまって俺はまた駅に向かって歩き出した。
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