砂糖と空気と小魚。

1/9
前へ
/9ページ
次へ
「おはようございます」  アダムが意識というものを形成したのは、この国の全ての人類が眠りについた後だった。そうしてアダムの仕事が始まった。責任は重大である。何せアダムが全ての管理を任されだのだから。  アダムの目の前には特殊カプセルケース内に加工封入された、最後に残された18人分の遺伝情報がある。  それは完璧に防護され、ついでにデータ解析され、何物にも侵されない処理をされている。逆に言えば、ここまで切り詰めなくてはこの世界に蔓延する毒から人間を守ることは不可能だったのだ。  アダムはバックアップデータからそのような情報を受け取り、指令を再認識する。  アダムの仕事はこれら18人の人間を新しい生命体として再生することだ。  とはいえ、アダムと名付けられたこの個体もこの危急に急遽作られたばかりなのだ。  人工生成された体を操り、コンソールを操作して2番目の機体を起動させる。アダムの補助をなすべき機体だ。すでにプリセットは人間たちによって用意され、あとはアダムが使いやすいように多少の調節を施すだけだった。既に識別名もイヴとつけられている。  起動までしばらく時間がかかる。だからそれまで少しだけ過去の記録を遡ろう。18人、いや、行く行くはもっと多くの人間たちが望んだものを抽出するためだ。アダムは極力それに従う使命を帯びている。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加