二人だけの秘密

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やがて私は夏美に追いつくと、「音がしたのはここ?」と、囁やくように夏美に聞いた。 私と夏美が行き着いた場所は、小さな倉庫のような場所だった。 私がの質問に対して、しばらくしても夏美から返事をしないので、私は少しムッとした顔で夏美の顔を覗き込む。 「静かに。音がしたのはここなんだけど、なんか中の様子がおかしいんだよ。ほら、ここの隙間から中が見えるよ」 中の様子がおかしい? これが何を意味しているのかは分からなかったが、私は夏美の言う通りに、彼女が言う隙間から中の様子を覗いた。 建物の中は薄暗い明かりで照らされていて、ざっと10人程の男が、倉庫内をフラフラと歩き回っているのが見える。 更に、奥の方に居た男が、異国の言葉を話しながら、大型の袋から細長い鉄のような物を取り出しているのが見えた。 「なんだろう? あれ」 同じ隙間から建物内を除く夏美が、私が思った事と同じ疑問を私にぶつける。 私は素直に分からないと答えたが、それが何なのかが気になってしまった私達は、その場から離れずに、中の様子を静かに見守る事にした。 しばらくすると、細長い鉄のような塊が、大きなテーブルの上に次々と置かれ始める。 あの細長い鉄、何処かで見たことがあるような気がするのだが、それが何だったかがどうしても思い出せない。 それでもしばらく様子を見ていると、今度は別の男がボストンバッグを数個机の上に放り投げた。 そして、先程細長い鉄を机に並べた男が、そのバッグの中身を漁るように確認している様子も確認出来た。 だがその直後、バッグの中身を確認した男と、その両脇に居た男が、腰のあたりから引き抜いた何かをその他の男たちに向けた途端、バッグを放り投げた男と、その仲間であろう男達が床に倒れ始めたのだ。 その光景を見た時、私はあの細長い鉄の正体を、はっきりと思い出した。 「夏美……あれは銃だよ」 そう言って夏美を見上げると、彼女も小刻みに頭を振り、私の意見に同意しているようだ。 私達は、たまたま通りかかった裏路地で、銃の密売と殺人事件を目撃してしまったのだ。
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