二人だけの秘密

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「大丈夫ですか? もう心配いりませんよ!」 私と夏美の元に、見た事のあるブルーの制服を着た人達が駆け寄って来た。 「大丈夫ですか? 起き上がれますか?」 そうやって懸命に私達に声をかけながら介抱してくれる男性の胸元に、[大分県警察]の文字が光っている。 殺されそうだった私達の元に駆けつけてくれたのは、たまたま付近を警戒していた数名の警察官だった。 「声が聞こえたので、もしやと思って駆けつけました。間に合って良かった。もう心配いりませんからね。さぁ、パトカーに乗ってください。ひとまず安全な場所に移動しましょう」 警察官に促され、私達は同じパトカーの後部座席に乗車し、大分県警別府警察署に身柄を保護された。 パトカーの中では、警察官が私達の緊張を少しでも和らげようと、いろいろな事を気さくに話しかけてくれたのが、今となってはとてもありがたかったのをよく覚えている。 その話の中で、最近は博多などの大きな貿易港での物流の監視が強化されている事から、主要な貿易港を避けて、観光港である別府港から銃や麻薬を密輸する犯罪グループが増えているとも教えてもらった。 警察署についた後も、警察官の献身的なケアのおかげなどもあり、私と夏美の精神は、翌日にはなんとか回復したのだが、警察からは、今後はなるべく一人では行動しない事や、しばらくの間は実家で生活することを強く進められた。 夏美に関しては、現在住んでいる所が学生寮であることも有り、防犯の観点からも、一人で出歩きさえしなければ、特に問題はないだろうと言う事になった。 私はと言うと、親が借りてくれた学生専用の賃貸マンションに一人で生活していたため、やはり安全を重視して、一時的に実家へ帰省する事になったと言う訳だ。 そして夜が明け、私と夏美はいつものように研修先の病院に向かった。 実を言うと、研修先の病院からも看護学校からも、気分が落ち着くまで自宅療養していて構わないと言われていた。 たが、いくら自宅にいるからと言っても、私の家は両親共働きで、家に居た所で一人になる時間は必ずある。 それならばいっその事、研修に精を出したほうがよっぽど気が紛れるし、安全な気がした。 学生寮だって同じだ。 学生寮なんだから、学校がやっているうちは、寮全体がもぬけの殻になってしまうのは仕方がない事だ。 それならばと、夏美も私と同じことを思って研修に参加したと言う事だった。
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