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唐突な否定には、反感より逃避が勝る。
何のことか分からず、目を逸らす刑事達。
その行動パターンは予想できた風花。
まずは皆んなの気を引き戻す。
「私は、KANNA…じゃなくて💦七森華奈とはユニ宿の親友であり、元バーチャルシンガーグループという付き合いなの。だから、時々連絡をしてました」
分かる様で分からない付き合いであったが、皆を逃避から解放した。
「ニューヨークでの黒魔術は、悪魔の力を利用するものであって、霊魂は関係ありません。精霊の中には悪魔も含まれている様ですが、ソフィア市長の先祖の悪霊は、本人か或いは別の者の意思で、イライジャ議員を殺したのです」
「では聞くが、あの現場に残された黒魔術の儀式は何なのだ?」
「アレン刑事さん、あれは呪う儀式ではなく、自らを悪魔に捧げる…つまり悪魔崇拝に使われる自己犠牲の儀式だと、華奈は言っていました」
「自己犠牲?…自殺か⁉️まてよ…そう言えば、ザ・ホールの現場でKANNAさんは、やはり…とか呟いていた様な…」
あの時、元相棒のイザベラと現場で初めてKANNAに会った時を思い出すアレン。
「あの呪殺サイトで教えている呪いの儀式は、自らの命を捧げるものだそうよ。まぁ…あんな強大な悪魔に依頼したら、いずれにしろ死を招くらしいけど」
「つまり…月島さん、君はあの呪殺サイトは偽物で、呪殺に見せかけた警察へのフェイクだと?」
「そうです…って、華奈が言ってました。私の推測では、もしもネイティブアメリカンを恨む悪霊の意志なら、儀式はそれをサイトの運営者が偽装したもの。悪霊を利用したものであれば、本命は殺害した内の誰かで、他は主犯はサイトの運営者です」
「サイノス、ソフィア市長に任意同行を!絶対に外部に知られない様に、理由は署に着くまで、市庁舎の件の最終確認としろ」
「了解、ボス。行くぞ」
相棒と出て行くサイノス刑事。
「どうした、紗夜?」
さっきから黙り込んでいる紗夜を、ハリスは気にしていた。
「風花さん。あなたはさっき、ニューヨークでの…って言ったわよね?」
「さすがは紗夜さん。華奈の調べでは、全米のあちこちで時期を違えて起きていて、そっちは本物だと言ってたわ。紗夜さんは…大丈夫だと思うけどね。アイにリストアップして貰ったから…今送りました。パスコードは分かるわね」
「ありがとうございます」
タブレットPCにTERRAのパスコード付メールが届いた。
「最後に、私が見たところ、今回の事件は一連の様に見えて、今のところ2つの事件が重なっています」
「その様ね、風花さんの情報で私も確信が持てました。…何だか、以前のヴェロニカさんが戻ったみたいで心強いわ」
「いえ💦あの人に比べたら私なんか子供みたいなものです。で、では皆さん、くれぐれもお気をつけて。華奈のこと…よろしくお願いします」
焦った様に通信を切る風花。
「紗夜、2つの事件とは…どういうことだ?」
アレンの問いに、全員が注目した。
「1つは、このニューヨークで起きている、呪殺サイトをフェイクとした、ネイティブアメリカン連続殺人事件。犯人の目的が未だに分かりません。もう1つは、バズミール・ダグラスの娘を狙ってる悪魔『イヤ』の事件。これには深い因縁がありそうです。そして…」
紗夜が美優を見る。
軽く首を振る美優。
「いえ、すみません。今はその2つに集中しましょう」
「よし、ソフィア市長とメアリス候補の待機命令も期限が切れた。マスコミや世間も注目している。くれぐれも慎重に頼む」
「私は、千尋さんを連れて、ダグラス社へ。ティークさん、来てもらえますか?」
「紗夜さんを守れとも言われている。了解」
「じゃあ俺は、ソフィア市長を探ってみるよ。この事実を聞いて、どういう反応を示すか」
「私が守るわ」
美優が名乗りを上げる。
「君が…俺を?」
「相手は悪霊。神が必要でしょ」
「俺は風花のデータを整理して追ってみる」
「T2、データは転送したからお願いします」
「他の者は引き続きKANNAさんの捜索と、ネイティブアメリカンの要人警護を!」
こうして、再び捜査が動き始めた。
紗夜と美優の心に疑念を残して…。
〜マンハッタンの某ビル〜
普通でいることの退屈さ。
それ以上に、予想外に辛い状況のKANNA。
「まさか…絶食を強いられるとは💧」
快適と思われた囚われの日々のはずが…
山羊のミルクと水しか与えられずにいた。
「生け贄確定ってことか。…面白い」
考えられる容疑者は3人。
ここがどこか?そのビルは分かれど、何の?誰の?そこまでは知らない。
「外は今頃どうなっているのやら…フッ」
すっかり独り言が身に付いた自分が笑えた。
(とりあえず、まだ大丈夫そうね)
いつもと変わらない街の風景に安堵する。
そこへ、聞き慣れない空気音がした。
フラっと、眩暈を感じてそれに気付く。
「クッ…ガスか!」
時既に遅く、意識は闇の中へ堕ちていった…
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