第5章.因縁

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唐突な否定には、反感より逃避が勝る。 何のことか分からず、目を逸らす刑事達。 その行動パターンは予想できた風花。 まずは皆んなの気を引き戻す。 「私は、KANNA…じゃなくて💦七森華奈とはユニ宿の親友であり、元バーチャルシンガーグループという付き合いなの。だから、時々連絡をしてました」 分かる様で分からない付き合いであったが、皆を逃避から解放した。 「黒魔術は、悪魔の力を利用するものであって、霊魂は関係ありません。精霊の中には悪魔も含まれている様ですが、ソフィア市長の先祖の悪霊は、本人か或いは別の者の意思で、イライジャ議員を殺したのです」 「では聞くが、あの現場に残された黒魔術の儀式は何なのだ?」 「アレン刑事さん、あれは呪う儀式ではなく、自らを悪魔に捧げる…つまり悪魔崇拝に使われる自己犠牲の儀式だと、華奈は言っていました」 「自己犠牲?…自殺か⁉️まてよ…そう言えば、ザ・ホールの現場でKANNAさんは、やはり…とか呟いていた様な…」 あの時、元相棒のイザベラと現場で初めてKANNAに会った時を思い出すアレン。 「あの呪殺サイトで教えている呪いの儀式は、自らの命を捧げるものだそうよ。まぁ…あんな強大な悪魔に依頼したら、いずれにしろ死を招くらしいけど」 「つまり…月島さん、君はあの呪殺サイトは偽物で、呪殺に見せかけた警察へのフェイクだと?」 「そうです…って、華奈が言ってました。私の推測では、もしもネイティブアメリカンを恨む悪霊の意志なら、儀式はそれをサイトの運営者が偽装したもの。悪霊を利用したものであれば、本命は殺害した内の誰かで、他は主犯はサイトの運営者です」 「サイノス、ソフィア市長に任意同行を!絶対に外部に知られない様に、理由は署に着くまで、市庁舎の件の最終確認としろ」 「了解、ボス。行くぞ」 相棒と出て行くサイノス刑事。 「どうした、紗夜?」 さっきから黙り込んでいる紗夜を、ハリスは気にしていた。 「風花さん。あなたはさっき、…って言ったわよね?」 「さすがは紗夜さん。華奈の調べでは、全米のあちこちで時期を違えて起きていて、そっちは本物だと言ってたわ。紗夜さんは…大丈夫だと思うけどね。アイにリストアップして貰ったから…今送りました。パスコードは分かるわね」 「ありがとうございます」 タブレットPCにTERRAのパスコード付メールが届いた。 「最後に、私が見たところ、今回の事件は一連の様に見えて、今のところ2つの事件が重なっています」 「その様ね、風花さんの情報で私も確信が持てました。…何だか、以前のヴェロニカさんが戻ったみたいで心強いわ」 「いえ💦あの人に比べたら私なんか子供みたいなものです。で、では皆さん、くれぐれもお気をつけて。華奈のこと…よろしくお願いします」 焦った様に通信を切る風花。 「紗夜、2つの事件とは…どういうことだ?」 アレンの問いに、全員が注目した。 「1つは、このニューヨークで起きている、呪殺サイトをフェイクとした、ネイティブアメリカン連続殺人事件。犯人の目的が未だに分かりません。もう1つは、バズミール・ダグラスの娘を狙ってる悪魔『イヤ』の事件。これには深い因縁がありそうです。そして…」 紗夜が美優を見る。 軽く首を振る美優。 「いえ、すみません。今はその2つに集中しましょう」 「よし、ソフィア市長とメアリス候補の待機命令も期限が切れた。マスコミや世間も注目している。くれぐれも慎重に頼む」 「私は、千尋さんを連れて、ダグラス社へ。ティークさん、来てもらえますか?」 「紗夜さんを守れとも言われている。了解」 「じゃあ俺は、ソフィア市長を探ってみるよ。この事実を聞いて、どういう反応を示すか」 「私が守るわ」 美優が名乗りを上げる。 「君が…俺を?」 「相手は悪霊。神が必要でしょ」 「俺は風花のデータを整理して追ってみる」 「T2、データは転送したからお願いします」 「他の者は引き続きKANNAさんの捜索と、ネイティブアメリカンの要人警護を!」 こうして、再び捜査が動き始めた。 紗夜と美優の心に疑念を残して…。 〜マンハッタンの某ビル〜 普通でいることの退屈さ。 それ以上に、予想外に辛い状況のKANNA。 「まさか…絶食を強いられるとは💧」 快適と思われた囚われの日々のはずが… 山羊のミルクと水しか与えられずにいた。 「生け贄確定ってことか。…面白い」 考えられる容疑者は3人。 ここがどこか?そのビルは分かれど、何の?誰の?そこまでは知らない。 「外は今頃どうなっているのやら…フッ」 すっかり独り言が身に付いた自分が笑えた。 (とりあえず、まだ大丈夫そうね) いつもと変わらない街の風景に安堵する。 そこへ、聞き慣れない空気音がした。 フラっと、眩暈を感じてそれに気付く。 「クッ…ガスか!」 時既に遅く、意識は闇の中へ堕ちていった…
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