第6章.凶行

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第6章.凶行

〜ソフィア・タワー〜 アレン、スコット、美優。 3人が身を乗り出してソフィアを問い詰める。 「何を企んでいる、ソフィア!」 前市長の不審死の謎と、丁度タイミング良くその座についたソフィアへの疑念。 警察上層部からの指示により、市長への捜査は禁止され、未だに吹っ切れていないスコット。 当時、その事件を一緒に担当していた相棒も、不慮の事故で失っていた。 「何をどう説明しろと言うのよ!」 「君はネイティブアメリカンの族長の家系だったよな?それもスー族と関連のある部族の」 「それは…確かにそうは聞いていますが…」 「今回の事件には、魔女として火炙りにされた女族長の悪霊が関わっている。さっきのがソレだ。なぜ君のところにいた?君の先祖ではないのか?」 年配の刑事が、真顔で悪霊との関係を、市長に追求している姿。 正直、少々気が引けるアレン。 「ま、まぁ…スコット先輩、少し落ち着いて」 「バカな、アレに遭遇して、落ち着いてなどいられるか!ソフィア、前市長もあの悪霊を使って殺害したんだろう❗️」 当時は悪霊など、考えてもいなかった。 それ故に、車が行き交う交差点の真ん中に、突如落ちてきて()かれた前市長。 その死に様と、ソフィアを結びつけることは、到底出来なかったのである。 「いい加減にしてください❗️祖先がスー族だからと言って、あらぬ罪を被せるとは、いくら警察でも訴えますよ、全く信じられないわ」 「いいだろう、法廷で明らかにしてやろうじゃないか!」 「どうかしましたか、市長?」 騒がしさに、他の職員が入って来た。 「あなた、直ぐに警備員を呼んで、このイかれた年寄りをつまみ出して!」 「何だと❗️」 「先輩💦今日のところは諦めて、準備を整えて出直しましょう」 「ちなみに、人権問題の訴訟と、殺人の告訴では、取り扱う裁判所も裁判官も全て違うから、戦うのは無理だと思うわ」 「えっ?」「そぅなの?」「マジか?」 冷静な美優の言葉に、固まる刑事と市長。 先に出て行く美優を、追う様に出る2人。 車に戻った。 「さっきはつい熱くなって、すまなかった」 「あんな目に遭ったし、仕方ないですよ。一応伝えることは伝えたし…紗夜がいたらな、市長の心理を読めたのに」 「それは無理だと思う」 「はぁ?どうしてだ美優さん?」 「何かバリヤの様なもので守られていて、彼女の心理に入り込むことは出来なかったわ」 「悪霊のしわざか?」 「いえ、アレの気配は消えました。それに、悪霊にそんな力はないし…市長との繋がりも感じられなかったわ。彼女は、本当にアレの存在を知らないのだと思います」 「どう言うことなんだ、訳がわからない」 「分かったことが一つ」 美優の目が厳しくなる。 「彼女は、ネイティブアメリカンを利用して、今の地位を得ているだけってこと。彼等に対する思い入れはない。それどころか、嫌っていると言うことです」 「確かに…先住民達の支持率は低く…シティ・アメリカンズとして成功した彼女への、ただの(ねた)みだと思っていたが…」 「社員専用のロッカー室では、シューズラックは白人と区別され、隅の方へ追いやられてたし、名札の位置も白人が上で、ネイティブアメリカンは下に離してありました」 社員達の記憶を辿った美優は、その事実を知り、最初にそれを確認していた。 「ではソフィア市長は…」 「今の地位を得るために、ネイティブアメリカンを利用しているだけの偽善者よ❗️」 怒りが瞳に青い火を灯す。 「しかし、現に次期市長にメアリスを推薦しているじゃないか」 「あれは、彼女を利用して自分をPRしてるだけ。一度得た地位を、簡単に渡すわけはない。ほら、この通り」 美優がスマホでニュースを見せた。 『現職のソフィア市長が、再選を表明』 『メアリスでは役不足と見切ったか?』 「なんてヤツだ!ますます許せん❗️」 「確かに、メアリスより目立っていたな…」 そこでアレンの携帯が鳴った。 「やっと繋がったか。やれやれ…マテオ州知事が…恐らく殺害された。紗夜刑事達もさっき向かったところだ、君達も5thアベニューへ向かってくれ」 「州知事が殺された⁉️わ、分かりました。直ぐに向かいます」 「何だと!まさか…」 「何ですスコット先輩?」 「マテオ・アンダーソン州知事は、アメリカ人でありながら、ソフィアを市長に推薦し、それにより自らも州知事を維持した人物」 「何だかややこしくなって来たな。だから政治の世界は嫌いだ」 「とにかく紗夜さん達と合流しましょ」 こうして、アレン達も現場へと向かった。
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