116人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
第6章.凶行
〜ソフィア・タワー〜
アレン、スコット、美優。
3人が身を乗り出してソフィアを問い詰める。
「何を企んでいる、ソフィア!」
前市長の不審死の謎と、丁度タイミング良くその座についたソフィアへの疑念。
警察上層部からの指示により、市長への捜査は禁止され、未だに吹っ切れていないスコット。
当時、その事件を一緒に担当していた相棒も、不慮の事故で失っていた。
「何をどう説明しろと言うのよ!」
「君はネイティブアメリカンの族長の家系だったよな?それもスー族と関連のある部族の」
「それは…確かにそうは聞いていますが…」
「今回の事件には、魔女として火炙りにされた女族長の悪霊が関わっている。さっきのがソレだ。なぜ君のところにいた?君の先祖ではないのか?」
年配の刑事が、真顔で悪霊との関係を、市長に追求している姿。
正直、少々気が引けるアレン。
「ま、まぁ…スコット先輩、少し落ち着いて」
「バカな、アレに遭遇して、落ち着いてなどいられるか!ソフィア、前市長もあの悪霊を使って殺害したんだろう❗️」
当時は悪霊など、考えてもいなかった。
それ故に、車が行き交う交差点の真ん中に、突如落ちてきて轢かれた前市長。
その死に様と、ソフィアを結びつけることは、到底出来なかったのである。
「いい加減にしてください❗️祖先がスー族だからと言って、あらぬ罪を被せるとは、いくら警察でも訴えますよ、全く信じられないわ」
「いいだろう、法廷で明らかにしてやろうじゃないか!」
「どうかしましたか、市長?」
騒がしさに、他の職員が入って来た。
「あなた、直ぐに警備員を呼んで、このイかれた年寄りをつまみ出して!」
「何だと❗️」
「先輩💦今日のところは諦めて、準備を整えて出直しましょう」
「ちなみに、人権問題の訴訟と、殺人の告訴では、取り扱う裁判所も裁判官も全て違うから、戦うのは無理だと思うわ」
「えっ?」「そぅなの?」「マジか?」
冷静な美優の言葉に、固まる刑事と市長。
先に出て行く美優を、追う様に出る2人。
車に戻った。
「さっきはつい熱くなって、すまなかった」
「あんな目に遭ったし、仕方ないですよ。一応伝えることは伝えたし…紗夜がいたらな、市長の心理を読めたのに」
「それは無理だと思う」
「はぁ?どうしてだ美優さん?」
「何かバリヤの様なもので守られていて、彼女の心理に入り込むことは出来なかったわ」
「悪霊のしわざか?」
「いえ、アレの気配は消えました。それに、悪霊にそんな力はないし…市長との繋がりも感じられなかったわ。彼女は、本当にアレの存在を知らないのだと思います」
「どう言うことなんだ、訳がわからない」
「分かったことが一つ」
美優の目が厳しくなる。
「彼女は、ネイティブアメリカンを利用して、今の地位を得ているだけってこと。彼等に対する思い入れはない。それどころか、嫌っていると言うことです」
「確かに…先住民達の支持率は低く…シティ・アメリカンズとして成功した彼女への、ただの妬みだと思っていたが…」
「社員専用のロッカー室では、シューズラックは白人と区別され、隅の方へ追いやられてたし、名札の位置も白人が上で、ネイティブアメリカンは下に離してありました」
社員達の記憶を辿った美優は、その事実を知り、最初にそれを確認していた。
「ではソフィア市長は…」
「今の地位を得るために、ネイティブアメリカンを利用しているだけの偽善者よ❗️」
怒りが瞳に青い火を灯す。
「しかし、現に次期市長にメアリスを推薦しているじゃないか」
「あれは、彼女を利用して自分をPRしてるだけ。一度得た地位を、簡単に渡すわけはない。ほら、この通り」
美優がスマホでニュースを見せた。
『現職のソフィア市長が、再選を表明』
『メアリスでは役不足と見切ったか?』
「なんてヤツだ!ますます許せん❗️」
「確かに、メアリスより目立っていたな…」
そこでアレンの携帯が鳴った。
「やっと繋がったか。やれやれ…マテオ州知事が…恐らく殺害された。紗夜刑事達もさっき向かったところだ、君達も5thアベニューへ向かってくれ」
「州知事が殺された⁉️わ、分かりました。直ぐに向かいます」
「何だと!まさか…」
「何ですスコット先輩?」
「マテオ・アンダーソン州知事は、アメリカ人でありながら、ソフィアを市長に推薦し、それにより自らも州知事を維持した人物」
「何だかややこしくなって来たな。だから政治の世界は嫌いだ」
「とにかく紗夜さん達と合流しましょ」
こうして、アレン達も現場へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!