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〜セント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂〜
回復したミラン・カイザー司教は、医師が止める手を振り切って、聖堂に戻っていた。
懺悔室で人々の罪の告白を聞き、優しく的確に癒していた時である。
その者が入って来た。
その瞬間から、空気の重みが変わった。
(何だ…これは?)
「神のご加護を。私は神のしもべ、意念も同情も持ちません。どうぞ告白を」
少し間を置く。
格子の小さな隙間からは、フードを被った者の性別すら分からない。
「罪を…犯した」
聴いたことのない重たく低い声。
「きっと…これからも沢山の罪を犯すだろう」
(止めて欲しいのか?)
「人は皆、それぞれに罪を背負っています。それを話したいのならば、告白しなさい。後悔しているなら、神に赦しを乞いなさい。止めて欲しいなら、自分に罰を与えなさい」
「クク…」
「何がおかしいのですか?」
「人…か。確かに皆罪人だ」
「他人は他人、それに目を向けるより、自らを見つめるのです」
「ミラン神父、貴方も罪人か?」
意外な返り討ちであった。
「人としての私は、皆と同じく罪人。司祭としてここにいるのは、その者にあらず、神の…」
「しもべ…か?都合のいい話だ」
言葉を切られる。
(信仰はなしか…厄介だな)
「面倒な客は、どの店にもいるものだ。告白、後悔…そんなものに何の意味がある?それに、自らに罰を与えられる者なら、後悔する様な罪など犯しはしない。違うか?」
倫理学的、哲学的な問いに、一瞬間が開く。
「考えた答えなど要らぬ」
(うっ…)
完全に先を読まれていた。
「この国は、大きな罪の上に築かれている」
「あなたのことを、お話しなさい」
何とか平静を装うミラン。
得体の知れない恐怖に、手が震えた。
「クク、怖いか?所詮は人間。神のしもべなどありはしない」
(これは…悪魔か!マズイ…)
何の準備もなく、突如現れた強大な力を放つ悪魔に、対処する術はない。
「私から見れば、お前は大罪者。そして、それに見合う罰は…」
「グァ⁉️」
心臓に走る激痛。
脈を打てず、全身に冷や汗が浮かぶ。
「死だ❗️」
苦しさに声も出ない。
(クソッ…誰か…)
「ククク。己の弱さを恥じるがいい。神の助けなど、無いと知るがいい」
必死で扉へと手を伸ばすが、力が出ない。
嘲笑いの声を聞きながら…
虚しくも意識が…消えた。
数分後、懺悔に来た若い女性が異変に気付く。
「キャァアアア❗️」
静かな大聖堂に、悲鳴が響き渡った…。
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