第1章.兆し

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〜マンハッタン〜 ニューヨーク州立芸術大学付属高校。 部活を終えた学生達が出て来た。 当大学は、大勢の人気芸能人を世に送り出しており、毎日の様に芸能各社やスカウトマンが出入りしている。 「皆んなお疲れ〜また明日な」 人気者のゲイル・ハントが手を振る。 容姿端麗で、両親も俳優である彼は、既に数本のCMやドラマに出ていた。 「クラブへ行かないか?サム」 幼なじみのサミュエル・キャンベスを誘う。 彼も同じく役者を目指している。 「ごめん、今夜はバイトで…」 「またかよ。まぁ…仕方ない。じゃあまたな」 直ぐに別の友人2人を捕まえて、迎えの車へと引っ張り込むゲイル。 それを見送るサミュエル。 (さて!僕も急がないと) 手を上げてタクシーを止め、アルバイト先へと向かった。 〜ニューヨーク市警本部〜 イザベラの運転で、アレン達が帰り着いた。 粗方は車の中で聞いた。 しかし、到底にわかに信じられる話ではない。 犯人が、人ではないだと言うことを。 市警ビルの5階に刑事課があり、朝まで明かりが消えることはない。 中へ入る3人。 「ただいま戻りました」 アレンが課長へ向けて声をかける。 その声に、課長と話していた女性が振り向く。 「アレン!」 「さ、紗夜!どうしてここに?」 「あなたこそ、ロスじゃないの?」 「ああ、今はここなんだ」 「何だ、知り合いなのか?アレン」 紗夜と挨拶したばかりの刑事課長、ハリス・パーカーが驚く。 「ええ、ロス市警で一緒でした。紗夜は優秀な刑事ですよ!」 ハリスも紗夜の評判は知っている。 そこでアレンが気付いた。 サングラスとステッキがない。 「紗夜…見えるのか?」 「ええ、日本で色々あって…視力は戻ったわ」 盲目の心理捜査官として、数々の難事件を解決し、大統領までも救った紗夜。 「良かったじゃないか!いや〜懐かしい」 その時、紗夜が気付いた。 「あなたは…確か…」 「紗夜さん、久しぶり。TERRA(テラ)KANNA(カンナ)です」 すると、入り口から声がした。 「おっ!KANNAじゃねぇか。ニューヨークから帰って来ないと思ってたら、ついに捕まったか?」 日本のTERRAコーポレーションで、社長であるトーイ・ラブのボディガード役?、通称T2(ティーツー)である。 「違うわよ💧T2」 車を停めていて遅れて来たT2。 その後ろからもう1人。 「あなたね、私を呼んだのは」 菊水(きくみず)千尋(ちひろ)。 一見は、華奢(きゃしゃ)で優しげな少女。 しかし本来なら、まだ精神科病棟か監獄にいるはずの複数の猟奇殺人を犯した重罪人である。 「そうよ。お前と紗夜さんを呼んだのは私」 「KANNAさん、私も?」 「菊水千尋の話を聞いて、連れ出せるのはラブと紗夜さんだけ。アメリカへとなれば、当然紗夜さんが付き添うはず」 「ついでに、ラブはボディガードに俺を同行させるって筋書きか。なら…ヤバい話だな」 「を止められるのは、T2しかいない」 T2には、身体中に埋め込まれたパワーチップにより、強大な力を発揮する特殊能力を持つ。 「まぁ…中へ入りたまえ」 不可解な展開に、一息入れるハリスであった。
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