第1章.兆し

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暫く無言で考えていたハリス課長とアレン。 その心中を覗いた紗夜。 「あの…千尋ですが、利用されてその力を制御できなかっただけで、何と言うか…考えてる様な殺人鬼ではありません」 「まぁ…確かに、こんな可愛らしい娘さんだしな。色々あったんだろう…」 訳が分からないまま、無理に納得するアレン。 「フッ。可愛らしい…か。悪くはないが、オレは娘ではない」 鋭い眼光がアレンを睨む。 背筋がゾクッとして、身をひくアレン。 テーブルに置いてあった、銀のゴルフボールが乗ったトロフィー。 ハリスがゴルフで勝ち取ったものである。 そのボールを、か弱そうな掌で握る千尋。 「フン」 その一呼吸で、握り潰した。 「千尋、何してんのよ💦」 安心させようとしていた紗夜が焦る。 「なんて力だ…」 驚いて見つめるアレン。 「あぁ…私の唯一の誇りが…」 悲しげに見つめるハリス課長。 「全く世話がやけるヤツだ」 KANNA(カンナ)がトロフィーに手をかざし、呪文を唱える。 「なっ!なんだ⁉️」 驚くアレンと涙目のハリス課長。 まるで逆再生映像を観ているかの様に、瞬く間にボールが元の形に戻った。 「私はラブに助けられ、TERRAで飼われている者。信じるかどうかは好きにしろ。これでも悪魔から力を貰い受けた…魔女だ」 次々と明かされる非現実的な正体。 それに、紗夜が現実性を加える。 (私がこうしてできるのも現実です。千尋には阿修羅と言う魔物が宿っていて、KANNAはラブさんが死の窮地から救った魔女です) 頭の中に聴こえた声に、紗夜の方を見る2人。 読心能力も、確かに同じ世界の事実と悟る。 「わ、分かった。…それで、なぜここへ?」 「面白そうだから来てはみたが、何をさせるつもりだ?」 威圧的な千尋の目。 それを平然と見返すKANNA。 「これでやっと本題に入れる」 ニヤリとして、呆れ声で呟いた。 タブレットPCを出し、テーブルに置く。 「今流行っている闇サイトだ」 その声で、暗い彩りのサイトが立ち上がる。 燃える図形を背景に、赤い文字が浮かぶ。 「『B.M.C.』何だこりゃ?」 T2が身を乗り出し、最初の疑問符を投げる。 「Black Magic Club…黒魔術クラブ」 「さすがは紗夜」 (七森(ななもり)華奈(かな)…) 背景の図形は逆五芒星であり、かつてKANNA(七森華奈)が復讐に用いたものである。 b8c9fda4-3927-472f-8c58-a5d450895e7a 「見たことはある…確か魔除けでは?」 アレンがKANNAを見つめる紗夜に問う。 「魔除けの五芒星(ペンタグラム)は星の頂点が上側のもの。これは逆位置の逆五芒星(デビルスター)で、悪魔の象徴…」 「悪魔だと?」 「その通り。そしてデビルスターは、以前の私が黒魔術で愛用していたもの。『B.M.C.』は、『呪殺依頼サイト』です」 「クク…悪魔に呪殺か。面白くなって来た」 「千尋❗️」 紗夜の一喝にニヤリとする千尋。 「刑事さん達。今ニューヨークで連続している、先住民(インディアン)の不審死。その半数はこのサイトに登録されたメンバーだ」 「何だって!マジか?」 メカニックでもあるT2が、既にサイトに入り、自作の侵入ソフトで、メンバーリストを探し出していた。 「これがそのリストだ」 アルファベット順に並び替え、ハリス課長とアレンに見せる。 「偽名やニックネームは禁止のサイトだ」 KANNAの言葉に、手帳を取り出して名前を探すアレン。 「ハリス、確かに不審死とされた6人の名前があります」 そこで、アレンの携帯が鳴った。 直ぐに出る。 「カリスト・ドイル…だな、分かった」 電話を切り、リストを見る。 「7人目。今夜のヤツだな」 KANNAの言う通り、リストに載っていた。 「じゃあ、7人は呪殺されたと?」 「紗夜、それは違う。彼らはクラブの会員だよ。呪う側だ。だよな魔女(ヴィッチ)」 その呼び名に、千尋を睨むKANNA。 Witch(ヴィッチ)に、事件を思い出す紗夜。 その時、サイト側が侵入に気付き、シャットダウンした。 「安心しろ。データは頂いた」 メモリーチップを抜き、ハリスに渡すT2。 ずっと1人で調査していたKANNA。 こうして、ニューヨークの事件に仲間達を引き込み、予想もしない闇へと向かうのであった。
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