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暫く無言で考えていたハリス課長とアレン。
その心中を覗いた紗夜。
「あの…千尋ですが、利用されてその力を制御できなかっただけで、何と言うか…考えてる様な殺人鬼ではありません」
「まぁ…確かに、こんな可愛らしい娘さんだしな。色々あったんだろう…」
訳が分からないまま、無理に納得するアレン。
「フッ。可愛らしい…か。悪くはないが、オレは娘ではない」
鋭い眼光がアレンを睨む。
背筋がゾクッとして、身をひくアレン。
テーブルに置いてあった、銀のゴルフボールが乗ったトロフィー。
ハリスがゴルフで勝ち取ったものである。
そのボールを、か弱そうな掌で握る千尋。
「フン」
その一呼吸で、握り潰した。
「千尋、何してんのよ💦」
安心させようとしていた紗夜が焦る。
「なんて力だ…」
驚いて見つめるアレン。
「あぁ…私の唯一の誇りが…」
悲しげに見つめるハリス課長。
「全く世話がやけるヤツだ」
KANNAがトロフィーに手をかざし、呪文を唱える。
「なっ!なんだ⁉️」
驚くアレンと涙目のハリス課長。
まるで逆再生映像を観ているかの様に、瞬く間にボールが元の形に戻った。
「私はラブに助けられ、TERRAで飼われている者。信じるかどうかは好きにしろ。これでも悪魔から力を貰い受けた…魔女だ」
次々と明かされる非現実的な正体。
それに、紗夜が現実性を加える。
(私がこうして会話できるのも現実です。千尋には阿修羅と言う魔物が宿っていて、KANNAはラブさんが死の窮地から救った魔女です)
頭の中に聴こえた声に、紗夜の方を見る2人。
読心能力も、確かに同じ世界の事実と悟る。
「わ、分かった。…それで、なぜここへ?」
「面白そうだから来てはみたが、何をさせるつもりだ?」
威圧的な千尋の目。
それを平然と見返すKANNA。
「これでやっと本題に入れる」
ニヤリとして、呆れ声で呟いた。
タブレットPCを出し、テーブルに置く。
「今流行っている闇サイトだ」
その声で、暗い彩りのサイトが立ち上がる。
燃える図形を背景に、赤い文字が浮かぶ。
「『B.M.C.』何だこりゃ?」
T2が身を乗り出し、最初の疑問符を投げる。
「Black Magic Club…黒魔術クラブ」
「さすがは紗夜」
(七森華奈…)
背景の図形は逆五芒星であり、かつてKANNA(七森華奈)が復讐に用いたものである。
「見たことはある…確か魔除けでは?」
アレンがKANNAを見つめる紗夜に問う。
「魔除けの五芒星は星の頂点が上側のもの。これは逆位置の逆五芒星で、悪魔の象徴…」
「悪魔だと?」
「その通り。そしてデビルスターは、以前の私が黒魔術で愛用していたもの。『B.M.C.』は、『呪殺依頼サイト』です」
「クク…悪魔に呪殺か。面白くなって来た」
「千尋❗️」
紗夜の一喝にニヤリとする千尋。
「刑事さん達。今ニューヨークで連続している、先住民の不審死。その半数はこのサイトに登録されたメンバーだ」
「何だって!マジか?」
メカニックでもあるT2が、既にサイトに入り、自作の侵入ソフトで、メンバーリストを探し出していた。
「これがそのリストだ」
アルファベット順に並び替え、ハリス課長とアレンに見せる。
「偽名やニックネームは禁止のサイトだ」
KANNAの言葉に、手帳を取り出して名前を探すアレン。
「ハリス、確かに不審死とされた6人の名前があります」
そこで、アレンの携帯が鳴った。
直ぐに出る。
「カリスト・ドイル…だな、分かった」
電話を切り、リストを見る。
「7人目。今夜のヤツだな」
KANNAの言う通り、リストに載っていた。
「じゃあ、7人は呪殺されたと?」
「紗夜、それは違う。彼らはクラブの会員だよ。呪う側だ。だよな魔女」
その呼び名に、千尋を睨むKANNA。
Witchに、事件を思い出す紗夜。
その時、サイト側が侵入に気付き、シャットダウンした。
「安心しろ。データは頂いた」
メモリーチップを抜き、ハリスに渡すT2。
ずっと1人で調査していたKANNA。
こうして、ニューヨークの事件に仲間達を引き込み、予想もしない闇へと向かうのであった。
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