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意識が、浮上する。
ぼうっとした頭で、考える。
──夢、か。
三年前の夏に引き戻された様な、リアルな夢だった。
あの日の苦い思いを新たに噛み締めて、瑛はゆっくりと瞼を持ち上げる。
整った男の寝顔が、目の前にあった。
心臓が止まるほど、驚いた。
混乱する。
男が誰だかは、分かっている。
東條蒼士──ルームシェアをしている、同じ大学の自転車競技部に所属する同級生。
今の瑛が親友と呼べる、ただ一人の男だ。
状況を理解しようと、頭を働かせる。
現在、瑛は横向きに寝ており、寝具に包まれた状態だ。だが、肌触りなどから、自分のものではないように思う。
つまり、ここは──蒼士のベッドなのだろう。
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