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 駄目だった。   恋は思案の外とは、良く言ったものだ。あまりにも当て嵌まり過ぎて、吐き気がする。  もともと、蒼士の外見は、瑛にとって魅力的なものだった。  黒く艶やかな髪に、張りのある褐色の肌、整った顔立ちは精悍とも言える。サイクルジャージの上からでも判る筋肉質な体は、骨格がしっかりしていて引き締まって見える。  肩幅が狭く、筋肉が付いていても痩せて見える瑛にとって、蒼士の男らしく均整のとれた体は、羨ましくもあった。  その上、蒼士は恩人だ。  高校一年生の夏に野球部を辞めて、瑛は居場所を失った。  ぽっかりと空いた時間を、何で埋めれば良いのか、わからなかった。  ゲームセンター、カラオケ、ネットカフェ──金を払って暇を潰すのも、長続きはしない。  勉強は嫌いで、勤労意欲も無い。図書館などという柄でもないし、新しく部活に入るのはハードルが高過ぎた。  持て余した時間に倦んで、苛立ちと焦燥を解消する術もなく──瑛の精神状態は、かなり荒廃していた。病む寸前だったと言っても良い。  そんなとき──蒼士が、声をかけてくれた。
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