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第1話 雨のち晴れは突然に
「え、それってBLじゃん!あの劇、BLだったの?」
それって文化祭としてどーなの?と、香子ちゃんが首を傾げる。
「何言ってんの!今の時代、恋愛に性別なんて関係ないの!それにしても、本当に気づかなかったの?裕介くん、絶対に日比谷先輩のこと大好きだったじゃん!」
香子ちゃんてば、本当に見てなかったらしい。ますます不思議そうな顔をしてる。
「だって、裕介の台詞に、そんなこと匂わす部分はなかったもの。実際、日比谷先輩は光ちゃんと結ばれたし。」
「もっとちゃんと裕介くんを見てれば分かったと思うけどなー。ってか、あんなかっこいい人、どうして見てなかったのかが不思議だよ!」
裕介くん、本当にかっこよかったなぁ…。小柄だけど、すっごく脚が長くて顔が小さくて、スタイル抜群。大きめの鋭い瞳は、夜のような深い濡れ羽色。
「まさに白馬の王子様って感じだったじゃん!」
「ほんと、菜々香ってば夢見がちなんだから。運命とか占いとか、大好きよねー。」
「う…香子ちゃんのいじわる…」
若干バカにされてるのが分かる。むうう、と唇を尖らせて見上げると、くすりと笑って
「ごめんごめん」
とハグされた。
もう、このくらいじゃ誤魔化されないんだからね!…と思いながらも、毎回許しちゃうんだよなぁ。
「それで、裕介くんが王子様級に格好良かったことは分かったんだけど、それがどうかしたの?」
「えっへへ、良くぞ聞いてくれました!」
ワクワクとドキドキで体がいっぱいになる。ああ、大好き、この感覚。思わず走り出したくなっちゃうような、幸せで弾けちゃいそうな感じ。イスから立って、くるりとターン。パッと腕を広げて、決めポーズ!
「これから、裕介くんを探しに行こうと思います!」
「却下ね」
「ええええええ!なんでぇ!」
がばーと抱きつくと、呆れたようにため息を吐かれた。
「文化祭で高校演劇部の劇に出てたからには高校生なんでしょうけど、それでも720人はいるのよ。男子生徒は360人。どうやって探すのよ。」
「大丈夫!1年生ってことと、ミハル先輩っていう名前ってことは分かってるから!」
そう言うと、香子ちゃんが驚いた顔をした。
「あら、菜々香にしては計画的ね。どうやって調べたのよ」
むっかー。失礼なぁー!けど、普段突っ走りすぎなのは本当だから睨むだけにしてあげる!
「体育館シューズが1年生のカラーの青色だったし、舞台の後で同じ学年の人にミハルって呼ばれてたから。」
ミハル先輩、女の子に取り囲まれてたなぁ〜。やっぱりモテモテ。わたしが入り込む余地なんて…。いやいや、今から諦めてどうする!ネガティブなんて、らしくないぞ、わたし!
「ミハルなんて、男にしては珍しい名前ね…。名字かしら。」
自分を盛り上げるのに精一杯だったわたしは、香子ちゃんのそんな呟きに、ちっとも気が付かなかった。
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