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第2話 ミハル先輩を探して
「か、香子ちゃん、高校生のエリア入ったことある…?」
「そりゃ、生徒会だし、いっつも入ってるわよ。ほら、行くわよ。」
「わわ、待って…」
私立中高一貫校の楓央学園(ふうおうがくえん)に通うわたしたち。中学生と高校生の校舎はわかれていて、あんまり関わらないんだよね。
ちょっぴり大人な先輩たちが行き交う高校生校舎に立ち入るのには、ちょっと勇気がいる。
ずんずん進んでいく香子ちゃんは、お金持ちの家の子。成績優秀で眉目秀麗。スラリとしたスタイルにボブヘアーが男子に人気な完璧美女なの。ちょっと強気なのが近寄り難い、なんてみんな言うけど、すっごく優しいしいい子なんだよね。
対してわたしはただの庶民の生まれ。まぁ、学園の八割は庶民なんだから、そんなに気にしてない。ちょっと気弱なわたしには、下校中の高校生をかき分けて進むのはハードルが高い。そんなこんなで、香子ちゃんの後ろにくっついててくてくついて行くのみ。とほほ、情けない。香子ちゃんがいてくれて良かった…。1人じゃ1歩も進めなかったよ。
「ほら、1年生のフロアよ。6組もあるのに、どうやって探すつもりよ。」
「ええと、この階段の前で待ってれば、1年生が全員通るから見逃さないでしょ?だから、ミハル先輩が来るまでここに立って待ってようと思うの!」
そう言うと、香子ちゃんは呆れたように眉尻を下げた。
「何言ってんのよ。部活に行く人はこっちの渡り廊下に行くじゃない。それより、ミハル先輩は演劇部なんでしょ?演劇部の部室に行った方が早いわよ。」
「あ、そっか!香子ちゃん、凄い!」
「あの…ちょっといいかな?」
素直に感動しちゃったわたしに、後ろから声がかけられた。
びっくりして振り返ると、すっごく綺麗なお姉さんが立っていた。ウルフヘアにカットされた黒髪に、垂れ目の大きな瞳がなんだか色っぽい。
ぽへーと見蕩れていると、香子ちゃんが反応した。
「あ、凛先輩じゃないですか」
「香子ちゃんお久しぶり。」
「えっと、2人は知り合いなの?」
びっくりしてそう聞くと、香子ちゃんが顔を顰めた。
「ほら、高一にすっごい女遊び激しい先輩がいるじゃない?高遠っていう」
「あー、かれんちゃんが相談してきたのって、結局あの人のことなんだよね?」
「そうそう」
1回、同じクラスのかれんちゃんが放課後に香子ちゃんに相談しに来たことがあった。今にも泣きそうだったから、香子ちゃんに任せてわたしは席を外して、後から事情を聞いたんだけど…。高遠先輩に引っ掛けられて、大変な目にあったらしい。
「ええ。その時に、わたしが香子ちゃんの相談にのったの。この学校の恋愛事情には、ちょっと詳しくてね?」
ぱちん、と凛先輩がウインク。様になっちゃうのが凄いなぁ。
「改めて、わたしは霞ケ谷 凛。あなたは…」
「はい!えっと、3年の菜々香です!」
「菜々香ちゃんね。さっき、ミハルを探しているって聞こえたんだけど、あってるかな?」
「はい!お知り合いですか?」
「お知り合いも何も、よく話す友達。まだ部活には行ってないだろうし、呼びに行こうか?」
「いいんですか?!!!!やったぁ!」
嬉しくて飛び上がると、凛先輩が笑ってぎゅっとしてくれた。
「ふふ、可愛いね。ちなみに、どうしてみはるんを探しているの?」
「えっと、文化祭の舞台で、ミハル先輩がすっごくかっこよくって!わたし、一目惚れって言うか…もっとお話してみたくって!」
うきうき気分のまま凛先輩にそう話すと、凛先輩の表情がぴしりと固まった。
「おーっとぉー…。」
「え?どうしたんですか?」
ちょっと怖くなって尋ねると、凛先輩が少し気まずそうに髪を掻き上げる。
「まぁ、会えばわかる事だし。まずは、会ってみて。話は、それからね。」
ミステリアスな凛先輩。1組(1組は成績上位者のクラス。ミハル先輩ってば、頭いいんだね…!!)にミハル先輩を呼びに入っていく。と、とうとうミハル先輩に会えるのかぁ…!
「みはるん――。中学の子がみはるんに会いたいってーーーー」
ああもう、どきどきするよぅ…!!
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