14人が本棚に入れています
本棚に追加
第5話 どうして
キーンコーンカーンコーン。
のっぺりとした電子音で、授業終了のチャイムが鳴る。さて。これから、美晴先輩とご飯を食べます!昨日、先輩からLIMEが来て、待ち合わせ場所を教えてもらったんだよね。ああ、LIMEのやりとりだけで心臓がばっくばくだったのに、実際にまた会ったら、わたし、どうなっちゃうんだろう…?
皮製の学生鞄からお弁当を取り出して、教室を出ようとすると、香子ちゃんに呼び止められた。
「菜々香、今日、美晴先輩のとこ行くの?」
「うん、そうだよ?」
「ふーん…。あらそう。行ってらっしゃい」
そう言うと香子ちゃんは、くるりと綺麗なボブヘアーを揺らし、スカートを翻して、いつもの仲良しグループの愛莉ちゃんたちのとこに歩いていった。
集めた机にお弁当を広げ、談笑する彼女たち。
「…うん!行ってくるね!」
そう笑顔で手を振ると、愛莉ちゃんと咲良ちゃんは、
「あ、菜々ちゃんは今日お昼は別なんだね!」
「おー、行ってらっしゃーい!」
って、にこっと笑って手を振り返してくれた。
「…行ってらっしゃい」
香子ちゃんは、こちらに背を向けたまま。いつも通りの色とりどりの彼女お手製のお弁当を広げ、食べ始めてしまった。
わ、わたし、何かしちゃったかな?
昇降口から外に出ると、青紫に色づいた紫陽花の植木の横に、美晴先輩が立っていた。
紫陽花を 眺める先輩 美形すぎ!
あまりの感動に俳句(きっちり季語入りだからテストにも書けちゃうね!)を詠んでいると、美晴先輩がこちらを振り返った。
「お、菜々香ちゃん」
「は、はいっ!菜々香です!」
「…そんな、緊張しなくていいよ。今日、昨日伝えた通り、お昼食べるのはスタジアム前のベンチでいいかな?」
うわあ、苦笑されてしまった…!恥ずかしさに顔が熱くなる。
「は、はい…行きましょう!」
い、いや、落ち込んでいる場合じゃない!頑張って、美晴先輩と親睦を深めないと!
最初のコメントを投稿しよう!