青いメロンソーダ

2/9
前へ
/9ページ
次へ
「私、彼氏できた!」 「ぇ……」 炎天下の遊園地、昼下がりのフードコート。日除けパラソル付きの円卓の向かいで、幼馴染の夏海(なつみ)が笑う。 私の声がパラソルの作った日陰に染み込む。園内のお化け屋敷でひとしきり叫んだ後の掠れた声。 …なにかが引っかかったような、そんな声。 「…ぇ、え〜!お、おめでとう!」 大切な親友の喜ばしい報告、華々しい話。 朝から気合を入れ、時間をかけてメイクした目元を歪ませて私は笑う。めいっぱいの笑顔を返してあげなくちゃ。 「ありがとー!(あおい)はどうなの?気になる人とかできた?」 メロンソーダを飲みながら笑顔を浮かべた夏美。 彼女の美人さを際立たせるナチュラルメイク、涼し気な青のシアートップス。女友達と遊ぶ休日の姿、その全てがいつも通り。 メロンソーダは夏美の好物だった。ここの遊園地のフードコートでは必ず頼む。私もつられてそれをよく飲んでいた。 「ぇと、まだ…かな?」 向かい合う2つのメロンソーダに、夏の陽射しが青く光る。 メロンソーダの青い泡がふわふわ、ふらふら。 「私ね……」 続けざまに出そうになった言葉をひとつ、私はグッと抑え込んだ。 「……」 俯き、メロンソーダを見つめる。 「…じゃあ来年からは彼氏と遊園地に来なよ?」 「えー、なんでよ!」 「お金だってかかっちゃうでしょ?高校生だし余裕ないし!」 「いや、バイトすればなんとか…」 「私たち来年3年生だよ?受験でそんな余裕は…」 「むむむ…」 考え込む夏海を見て、ふっと笑みがこぼれる。夏海が悩むときは真剣な表情をするから、どれだけ想っているかが伝わってくる。 私は…それだけで嬉しかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加