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「……で、さっき思い出したのは?」
次は自分の番だとばかりにニコニコしながら言うアミに、「えーっと、それは……」と、言いよどむ。
いざ話すとなると、やおら恥ずかしくなって、割り箸を手にしたままフリーズした。
「おーい、美都。なに固まってるの?」
アミに呼びかけられ、「ああ、うん……」とだけ声に出して、割り箸を持った手をぎくしゃくと動かした。
「……言いにくいことなの?」
何かを察したらしいアミが口にして、
「だったらムリに言わなくてもいいよ」
と、私に笑って見せた。
「……でも、」と、気をつかわせてしまって申し訳ないようにも思えて、ちょっとくらいぼかしてなら言えるかなと、口を開きかけると、
「でもじゃなーい」と、アミが私を制した。
「あのね美都、そうやってムリしなくていいって言ったでしょ。それに、私に気をつかわせたとか思ってるなら、まるで逆だから」
「……逆って……」
どうしてこういつも彼女には、心の内を見透かされてしまうんだろうと思いつつ、ぼんやりと呟いた。
「だって、逆じゃない。気をつかってるのは、いつだって美都の方なんだから。言いにくいことは、わざわざ言わなくてもいいんだってば」
そう言ってアミがヨシヨシと私の頭を撫でると、「それにね……」と、付け加えた。
「なんとなくわかっちゃったし。カギの話の流れから思い浮かんだことなら、きっと……カギを一つにとか、そう言うことでしょ?」
「……なん、なんで……」なんでわかっちゃったんだろうと、目を丸く見開く。
「美都、それ答え言っちゃってるのと、おんなじだって」
笑って言うアミの横で、「えっ、なになに?」と、まだ気づいていないらしいエミが、納得がいかない風で眉を寄せる。
「エミも、もう少ししたらイヤでも分かるから……」
アミは、まだ不思議そうな顔のエミにそう話すと、
「……ね、美都?」と、私に片目をつぶって見せて、
「式には、呼んでね」──なんて、とんでもない一言を囁きかけて、この短い間で実に三度目にして、もはやふしゅーと湯気が立ち上りそうな程、私の顔を真っ赤っかにしてくれた。
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