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建物をうっとりと見つめる、俺のTシャツの裾をダーチャが強く引っ張った。
「ねえねえ、祥、見て、見て、すごいよ!
あそこ、あそこ!」
「え?」
「ダイコンが歩いてる!!」
「はあ!?」
思わずダーチャが指す、緑が生い茂る桜の庭を凝視する。が、冷静に考えると、ロジックがめちゃくちゃおかしい。
ダーチャ、いいか、よく聞け。
大根は歩くもんじゃない、喰うもんだ。
俺が優しく諭すと首を傾げる。
「じゃあ、あれは何だったのかなあ。」
「きっと、心労が祟ったんだよ。肩の傷のこともあるし、少し、ここで休もうか。」
素直に頷くダーチャをスーツケースに座らせてから、近くの自販機で清涼飲料水を購入する。ダーチャにゆっくりと飲ませて、汗ばんだ、おでこの熱を自らのおでこで測る。熱中症ではないようだ。
のんびりとふたりで水分を摂っていると、突然、上から強い視線を感じた。
驚き見上げると、まるで天使のような金髪の巻き毛の、性別不明な美しいローティーンの子どもと目が合った。最上階のベランダの鉄柵から素足を出し、じっと俺たちを見つめている。それからもうひとり、黒髪のイケメン外国人が現れて、俺たちを見てなんか喋ってる。
何だろう。組み合わせが珍しいのかな。
BL禁止国のF国ならまだしも、欧米じゃ国際BLカップルも少なくないだろうに……。
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