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休憩を終えた俺たちは重たいカートとスーツケースをふたり協力して押し上げながら、坂道を登っていく。
傾斜は緩いのに、荷重が足にかかって意外とキツい。
全ての荷物を上げ切って小休止する。
このマンション、いいな。坂の上から低層住宅を望む景色も、なかなかに悪くない。
ひと息ついてそろそろ移動しようかと視線を駅の方に向けると、ひょろっとした体躯の男が不安定な脚立の乗り方をして、エントランスの電球を交換しているのが目に入った。
トラブルが起きると誰しも姿勢が悪くなるものだ。だが、脚立を支える人物は一向に現れる様子がない。
どうも危なっかしいな、と思った瞬間に、梯子が小刻みに揺れバランスを崩し始めた。
「ダーチャ、危ないから、そこにいて!」
俺はリュックを背負ったまま、エントランスに向かって、全力で駆けだした。
頼む、間に合ってくれ!
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