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「うわっ」
微かな叫びと共に、梯子は大きくバランスを崩して前のめりに浮き上がる。俺は咄嗟に下段に足を置いて体重をかけ、反動でバランスを崩した男の身体を抱きとめた。
良かった。
間一髪、何とか、間に合った。
よほど驚いたんだろう。かかる荷重が未だに軽くならない。大丈夫かな。
「あの……大丈夫ですか?」
恐る恐る声を掛けると、男は咽せるような咳を幾度もして、大きく頷いた。
「ああ、ありがとうございます、すみません。」
「あ、良か……。」
俺が言いかけた時、棘のある言葉がエントランスの方から飛んでくる。
「今すぐヒロから離れろ!このヘンタイ!!」
白い小型犬を抱いた美少年が、険しい表情で俺を睨めつけた。威嚇しながら近づくと、片手で男を引き剥がそうとするので、俺はそっと腕を離す。
俺が少年に事情を説明しようと口を開けると、今度は後ろから羽交締めされて、思わぬ声が飛んできた。
「違うもん!祥はヘンタイじゃないもん!僕の可愛い小鳥さんだもん!!」
俺の眉間に皺が寄ったのは言うまでもない。
ダーチャ、頼むから
事態をややこしくせんでくれ。
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