家なき子・新たなサバイバルへ

1/4
前へ
/87ページ
次へ

家なき子・新たなサバイバルへ

「どうぞ」 俺とダーチャは紘さんに連れられて、アルファ・ビルヂングの307号室に足を踏み入れたのは、芹くんとダーチャが吠えあってから1時間ほど後のことだった。 捨てる神あらばヒロう神あり。 俺たちの、セタガヤ流浪の旅事情を知った紘さんは、「人情割」の特例で、今日から入居を許してくれた。 とは言え。 「ショー君の人柄は、概ね分かったから大丈夫。」 っていう紘さんの人の良さが、他人事ながらめちゃくちゃ心配ではある。ゾンビだろうが大根だろうがお構いなしに入居させてしまいそうで。いや、だからこそ、ダーチャの入居も許されたわけだけれど。 物件としては非の打ち所がなかった。1LDKにリフォームされて間もないこの部屋を気に入ったのは、俺だけでなくダーチャもだ。 ドアというドアを開け、スイッチというスイッチを押しまくって、大はしゃぎで部屋の中を探検している。それからサッシを開けベランダに出ると、鉄柵に凭れ日暮れた外に向かって謎の歌を歌い出した。 「ババンガヴァンパイヤ〜♫  メソメソヴァンパイヤ〜♫」 実にご機嫌ですな、王子。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加