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プロローグ・ネロになった日
57日と56時間、
それから、
ほんの少しの回り道。
俺の人生を大きく変えた
辺境国家への旅路は
萎びた紫陽花の枝葉が
微風に揺れる
曇天の東京・世田谷で
それはそれは美しい
エンドロールを迎える
はずだった。
「タイキョカンコク」
社宅のドアに貼られた
無機質で無慈悲な
冒頭の見出しを
日本語を覚えたばかりの
俺の可愛いパトラッシュが
朗々と読み上げる。
ああ、パトラッシュ!
俺は、もう、疲れたよ。
だんだんと
意識が遠のき
その日、俺はとうとう
ネロになった。
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