プロローグ・ネロになった日

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スマホの画面を凝視する俺に、ダーチャが待ちくたびれたようで、甘えた声をかけてきた。 「ねえ、祥、おうちに入れないの?」 俺は気落ちしたまま苦笑する。 「ごめんね、ダーチャ。いまは、社宅に入れないんだ。」 「ううん、僕、祥と一緒なら、どこでもいいよ。」 事情を察したのか、ダーチャはそっと腕を伸ばし抱き抱えると、キスして慰めてくれた。 ほんと(犬みたいに)可愛い。 カシュガラのテントで語り合ったときは、Maybe Somedayくらいの、希望でしかなかった、ダーチャの日本滞在。 ダーチャを溺愛し過ぎるヘリコプター爺さんと丁々発止の交渉をした結果、こうしてダーチャの日本滞在が現実となったんだ。落ち込んではいられない。 俺はダーチャを強く抱いて、なんとか自分を奮い立たせる。 そんなときだった。
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