家なき子・セタガヤを放浪す

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家なき子・セタガヤを放浪す

そんなこんなで俺とダーチャは、寂寞としたF国の荒涼な大地から戻った途端に、宅地に包まれた広陵な武蔵野台地・セタガヤ某所へ放り出されることとなった。 先の管理人は好意から特別に鍵を開けてくれたものの、猶予期間は過ぎたから社宅には住めないと言う。社宅から貴重品が取り出せたのは不幸中の幸いだが、今宵の宿を抑えなければ、セタガヤトラベル野宿コースが待っている。 俺ひとりだけならまだいいが、ダーチャが一緒だとケーサツから職質される相当めんどくさい特典も漏れなくついてくるから、何としても野宿だけは避けねばならない。 私鉄の駅の方に戻って、 レンタカーでも借りるとするかな。 最悪、ラブホテルという選択肢もあるし。 旅を終えて減るはずだった荷物を更に増やし、スーツケースや工具のカートを引き摺る鈍い車輪の悲鳴が、陽の傾きはじめた閑静なセタガヤ住宅街に響き渡っていた。
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