第九章 「仲良し大作戦3 side奈々瀨」

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「フッフッフ〜、まぁまぁ落ち着きなさい。......それはね、ミノリちゃんの気持ちを考えることだよ」 「あ...?」 (何言ってんだ?こいつ...)  気持ちを考える?俺が深瀬の___。 「ナナくんは、自分では気づいてないかもしれないけど、みんなのことを気にかけていない。関心があるようで、心の奥底では自分のことしか考えていない。別に悪いことじゃないと思うんだ。自分を大切にできるってすごいことだから」 「......そうかもしれないな。でも、それなら俺は深瀬にも関心がない...あいつの気持ちを考えることなんてできやしないんじゃないか?」 誰のことも考えることができない。結局は自分が一番大切で、自分のことを一番に想えるのが自分しかいないから。理に適った話だ。  だが茉紗の意見はそこにはないようで、ただ静かに首を振った。どこか寂しげな彼女の表情が見え隠れし、内心で疑念を抱いたが口には出さなかった。 「でもね、ミノリちゃんだけは違う。さっきだって、教室からいなくなったのがもしミノリちゃん以外の人だったら、きっとナナくんは迎えに行こうなんて考えなかった。ナナくんは心のどこかでずっとミノリちゃんのことを大切に思ってるんだよ。だから、ミノリちゃんの気持ちなら考えて...それで、共感することだってできるかもしれない」 胸に手を当てて、話を締めくくる茉紗。その全てを聞き終えて、奈々瀨は彼女と目を合わせた。自分がどんな表情をしていたのかわからない。ただ、それを見た茉紗がまん丸に目を見開いたことはわかった。複雑な感情がゴチャゴチャと心の中に混在している。気を紛らわすように、深い溜め息をついて口を開いた。
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